80点は得られる完成度 BYDシール 82.5kWhへ試乗 欧州市場のハードルは低くない

公開 : 2023.09.12 19:05

中国の新興ブランド、BYDからモデル3のライバルが登場 表情豊かで好印象なインテリア 高性能スポーツとまではいえない走り

従来より群を抜いて容姿の仕上がりが良い

日本や欧州ではバッテリーメーカーというイメージが強いかもしれないが、BYDは既存自動車メーカーに競り勝つという目標を掲げ、バッテリーEVの開発へ意欲的。今回試乗したシールもその1台で、いよいよグレートブリテン島でも2023年内に販売が始まる。

BYDは世界6つの大陸へ進出済みで、60万人もの従業員を抱えている。ソーラーパネルやバッテリーだけでなく、今回のような電気自動車もセダンだけでなく、大型バスまで手掛けている。

BYDシール・デザイン 82.5kWh(欧州仕様)
BYDシール・デザイン 82.5kWh(欧州仕様)

シールへ搭載される、コバルトを用いないブレード状のリン酸鉄リチウムイオンバッテリーも、もちろん自社製。電車も製造しているそうだ。

AUTOCARの読者なら既にご存知であろう、ハッチバックのアット3は、フォルクスワーゲンID.3のライバルに相当する。かたやシールは、テスラモデル3ヒョンデ・アイオニック6、BMW i4などと同じセグメントに属する。

どこかで見たことのあるような印象を受けるスタイリングだが、これまで欧州市場を視野に入れた同社のモデルでは、群を抜いて仕上がりが良く感じられる。海の生物を意識したデザインがディティールに散りばめられ、まとまりも悪くない。

基礎骨格とするのは、アット3と同じe-プラットフォーム3.0。シングルモーター版とツインモーター版がラインナップされ、前者の最高出力は312psがうたわれる。駆動用バッテリーの容量は82.5kWhで、航続距離は569kmだ。

ツインモーターの四輪駆動版は、530psとなかなかの数字。航続距離は519kmへ若干短くなる。

表情豊かで好印象なインテリア

インテリアは、シンプルでクールな雰囲気のモデル3より、表情が豊かで好印象。製造品質も高く見える。試乗車の場合は、手に触れる部分が広範囲にソフトタッチ加工されていた。ドアの内張りには、スウェード調の人工皮革も用いられていた。

i4ほどではないが、ダッシュボードにも高級感がある。目を引くのは、15.6インチと大きい高精細なセンター・タッチモニター。縦向きから横向きへ回転させられる。インフォテインメント・システムは、応答が素早く扱いやすい。

BYDシール・デザイン 82.5kWh(欧州仕様)
BYDシール・デザイン 82.5kWh(欧州仕様)

ただし、サブメニューに項目が分散しており、必要な機能を探すのに少々手間取る。シートヒーターの操作もエアコン・メニューの中に含まれているため、走行中にオフにすることは難しいと思う。

ドライバー正面に備わる、メーター用モニターは高精細。表示情報はカスタマイズでき、センターモニターとも連携している。

リアシート側は、傾斜したルーフラインが影響し頭上空間に制限がある。だが、身長が180cm以下なら、大きな不満を感じることはないだろう。中央の席は、子ども向けと割り切りたい。車内には、各所に小物入れが用意され便利だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サム・フィリップス

    Sam Phillips

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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