BMW、次世代EV世界初公開 「これまでにないBMW」目指したノイエ・クラッセの姿 IAAモビリティ2023

公開 : 2023.09.04 18:05

シンプルで「モノリシック」なボディ造形

ビジョン・ノイエ・クラッセは、BMWが今年初めにラスベガスのCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)で発表したコンセプトカー「iヴィジョンDee(i Vision Dee)」の進化版であることは明らかで、その鋭角的なシルエット(ドゥケック氏は、完全な3ボックスではなく2.5ボックスと呼んでいる)を生かしつつ広範囲に及ぶリファインが施されており、より市販車に近いものとなった。

BMWはこのデザインを「クリア、エレガント、タイムレス」と称している。横方向に広がったキドニーグリル、拡大されたサイドウィンドウ、スリムなLEDライト、現行車よりも「サーフェスとディテールがはるかにクリーン」とされる「モノリシック」なシルエットなどが、市販のノイエ・クラッセEV群の特徴になるであろう。

IAAモビリティ2023で公開されたBMWビジョン・ノイエ・クラッセ
IAAモビリティ2023で公開されたBMWビジョン・ノイエ・クラッセ    AUTOCAR

フレッシュで未来的な印象を形成するだけでなく、従来よりもシンプルな金型と少ない部品で製造できるようになるかもしれない。

「単一のインタラクションエリア」と表現されるフロントエンドは、ユーザーがクルマに近づくとヘッドライトにアニメーションを表示する。ドゥケック氏は「近年、光はわたし達のアイデンティティを強化するのに役立っています」と説明。BMWは「クロームを光に置き換えたい」と付け加えた。

一方、グリルには運転支援システム用のカメラやセンサーを搭載するが、それらは不透明なパネルの背後に隠されるためすっきりとした外観となっている。このグリルはまた、充電状況に関する通知や方向指示器を表示する可能性も示唆されている。同様に、ライトクラスターは走行モードに応じて色やデザインを切り替えることができる。

注目すべきは、BMWの世界販売においてSUVが大きな割合を占める中で、今回あえてセダンスタイルを選んだことである。ドゥケック氏によると、これは「フラットで車高の低いクルマ、特にセダンにはまだ未来がある」と考えているからだという。1960年代のオリジナルのノイエ・クラッセとの関連性も強い。「1960年代のノイエ・クラッセのシルエットには理由がありました。ファストバックは速く見えるからです」

ドゥケック氏はまた、伝説的なE30世代3シリーズが最新コンセプトのデザインに与えた影響を認めている。「わたし達は(セダンを)非常にエモーショナルなものにするというエッセンスを取り入れたいと考えています。E30はスポーツカーではありませんでしたが、ある種のシンプルさを提供し、エレガントなクルマを求める人々の欲求を満たすと同時に、ダイナミズムを求める人々の欲求も満たしていた。わたし達がこのクルマ(ビジョン・ノイエ・クラッセ)で表現したいのはこのことです」

プラットフォームの詳細はまだ明らかにされていないが、研究開発部門の責任者であるフランク・ウェーバー氏は、現行車と比較して「航続距離30%アップ、充電速度30%アップ、効率25%アップ」を標榜する。

「iドライブ」のロータリーコントロール廃止

第6世代(Gen6)となる新しいリチウムイオンバッテリーは、角柱型セルではなく円柱型セルを採用し、現行ユニットよりもスリムである。エネルギー密度が20%向上し、最大270kW(わずか10分で300km分追加)で充電でき、最終的には最大1000kmの航続距離を実現するという。

この次世代バッテリーの設計と生産工程の改善より、コストは最大50%削減されると推定されており、市販EVの価格に大きな影響を与える可能性がある。ただし、現時点ではノイエ・クラッセEV群の価格についてはほとんど触れられていない。

IAAモビリティ2023で公開されたBMWビジョン・ノイエ・クラッセ
IAAモビリティ2023で公開されたBMWビジョン・ノイエ・クラッセ    AUTOCAR

EVはまず、ハンガリー・デブレツェンにあるBMWの新工場で生産される。この工場では化石燃料を一切使用せず、再生資源の使用量を増やし、CO2排出量を削減すると言われている。ミュンヘンとメキシコの工場は、2026年と2027年に改修を行う予定だ。

ビジョン・ノイエ・クラッセのインテリアでは、BMWの車載OS、iドライブの第9世代を中心とする新しいデザインアプローチを採り入れている。2001年に登場したE65世代7シリーズ以来、BMWの特徴となっているロータリーコントロールを廃止し、必要最低限の物理的コントロールのみを備えたミニマルなコックピットに仕上がっている。

ドライバーは、センタータッチスクリーン、音声認識「インテリジェント・パーソナル・アシスタント」、大型のパノラミック・ビジョン・ヘッドアップディスプレイを使って車載機能を操作することになる。ヘッドアップディスプレイは主にステアリングホイール上のスイッチで操作するが、ジェスチャーでタッチスクリーンからホログラフィック・プロジェクションにコンテンツを転送することもできる。

その他の特徴として、鮮やかなイエローの内装、がっしりとした四角いステアリングホイール、スマートフォン用ワイヤレス充電器を内蔵する「フローティング」センターコンソールなどが挙げられる。

ドゥケック氏は、インテリアを担当するデザインチームが最優先したのは室内空間の快適さであり、「テクノロジーに囲まれた冷たい環境にいることを感じさせない」ようにすることだと語った。同氏は、ユーザーが実家にいるときのような親しみを感じつつも、日常生活に関連するすべての要素で「わたしを喜ばせてくれる」と考えるだろうと見込んでいる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事