BMW 435iクーペ Mスポーツ

公開 : 2013.10.26 19:37  更新 : 2021.10.11 09:07

この直列6気筒エンジンが披露するフィーリングは、実に魅力的なものだ。最高出力は306ps、最大トルクは40.8kgmということを知れば、それが4シリーズ・クーペをスポーティに走らせるために、いかに十分な動力性能を秘めたものであるのかは一目瞭然。わずか1200rpmで最大トルクを生み出し、それを5000rpm前後まで完全フラットに発揮させるセッティングは、結果的に素晴らしいフレキシビリティと同時に、きわめて息の長い加速感を実現する。高回転域でのスムーズさや、シャープなレスポンスは、いかにもBMW製の直列6気筒といった印象。彼らのエンジニアリングが、常にBMWのMが意味するところであるモーター=エンジンを中心に展開されていることを、再確認させられた次第だ。

センタートンネル上のドライビング・パフォーマンス・コントロール・スイッチで、「ECO PRO」、「コンフォート」、「スポーツ」、「スポーツ・プラス」の走行モードを選択できるのは3シリーズに共通するメカニズムだが、燃料消費率の最大効率を得ることを目的としたECO PROモードを選択しても、走りの魅力をまったくスポイルしないのは嬉しい。スポーツやスポーツ・プラスでは、エンジンレスポンスやシフトタイミングなどが、よりスポーティな方向に変化。435iクーペはさらに魅力的なスポーツクーペへと、姿を変える。

フロントに225/40R19、リヤに255/35R19サイズのタイヤを組み合わせるフットワークにも、十分な満足感が得られた。そもそも、ほぼ50:50という理想的な前後重量配分が実現されているほか、4シリーズ・クーペは、現行のBMW車の中では最も重心位置が低く設定されているのだ。フロントアクスルにトーションバーを追加されたことも、コーナリング時に、ステアリングの動きに対して、よりリニアなレスポンスが生み出されることになった大きな理由。絶妙なロールスピードの制御、前後タイヤのグリップバランス、そしてRWDという駆動方式。これらが見事な相乗効果を生み出し、435iのコーナリングには卓越した魅力が生み出されているのだ。

前車接近警告機能、衝突回避・被害軽減ブレーキ、そしてレーン・デパーチャー・ウォーニングという3つの機能を含む、ドライビング・アシストなど、安全のためのドライバー支援システムを積極的に標準装備化しているのも高く評価したい部分だ。3シリーズから独立することで、新たな価値観を求めた4シリーズ・クーペ。その最強モデルには、当然のことながらM4が存在する。すでにコンセプトカーは披露されているから、実際にそれが市場に投じられるまでの時間はそう長くはないだろう。そのデビューを世界のBMWファンは待ち望んでいる。

(文・山崎元裕 写真・花村英典)

ビーエムダブリュー435iクーペ Mスポーツ

価格 774.0万円
0-100km/h 5.1秒
最高速度 250km/h
燃費 13.9km/ℓ
CO₂排出量 169g/km
車両重量 1620kg
エンジン形式 直6DOHCターボ, 2979cc
エンジン配置 フロント縦置き
駆動方式 後輪駆動
最高出力 306ps/5800rpm
最大最大トルク 40.8kg-m/1200-5000rpm
馬力荷重比 189ps/t
比出力 103ps/ℓ
圧縮比 10.2:1
変速機 8段A/T
全長 4670mm
全幅 1825mm
全高 1375mm
ホイールベース 2810mm
燃料タンク容量 60ℓ
荷室容量 445ℓ
サスペンション (前)マクファーソン・ストラット
(後)5リンク
ブレーキ (前)Vディスク
(後)Vディスク
タイヤ (前)225/40R19
(後)255/35R19

記事に関わった人々

  • 山崎元裕

    Motohiro Yamazaki

    1963年生まれ。青山学院大学卒。自動車雑誌編集部を経て、モータージャーナリストとして独立。「スーパーカー大王」の異名を持つ。フツーのモータージャーナリストとして試乗記事を多く自動車雑誌、自動車ウェブ媒体に寄稿する。特にスーパーカーに関する記事は得意。

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