トヨタはいかにしてEVとエンジン車を「同等」にするのか 航続距離1000kmの次世代バッテリー技術

公開 : 2023.09.07 06:05

・トヨタの次世代バッテリー、航続距離1000kmを実現へ。
・安価な「普及版」も導入、バイポーラ構造でコスト削減。
・全固体電池は2027~2028年に実用化目指す。

トヨタ次世代バッテリー 2026年導入へ

ソーシャルメディアをざっと見てみると、内燃エンジンに代わる代替案になるのかについて、誰もが熱狂しているわけではないことがわかる。

それは、2030年(英国)の内燃エンジン禁止令によって、同等の代替品が存在しない新車に人々が寄り付かなくなるという事実と大いに関係があるかもしれない。しかし、だからといって必ずしもそうなるとは限らない。

EVは当初の予測を上回るスピードで進化しているが、課題も多く残されている。
EVは当初の予測を上回るスピードで進化しているが、課題も多く残されている。

3年後に予定されているトヨタの次世代バッテリー技術がその一例だ。航続距離は最長1000km、コストは20%削減され、充電時間は「20分以下」になるという。

数十年前に「代替燃料パワートレイン」が真剣に検討されるようになって以来、エンジニアリング企業、独立研究機関、自尊心の高い自動車メーカーの研究開発部門は、パワートレイン技術が今後どのように進化していくかを示す技術ロードマップを欠かすことはなかった。

自動車のグリーン化に関するメッセージは常にこうだった。「解決策は1つではない」

当初、バッテリーEV(BEV)は街中での使用に限定されるだろうと見られており、これほど早くこれほど実用性が高まるとは誰も予想していなかった。その結果、BEVは以前の予測を覆し、充電時間や航続距離の制限、充電ネットワークの不足といった妥協点なしに、内燃エンジン車と同等の代替手段になると期待されるまでになった。

これまでのロードマップを振り返ると、テクノロジーは予想を上回る速さで進化し、15年後には現在のEVが明らかに古くさくなっている可能性もある。

名手トヨタのバッテリー技術は、開発がいかに早く進んでいるかを示す好例である。初代プリウスが1997年の発売以来何年も赤字続きだったにもかかわらず、トヨタは姿勢を貫き、その過程でバッテリー開発に関する素晴らしい知識を蓄積したに違いない。

それだけに、技術ロードマップについてのトヨタの主張は、真剣に受け止める価値があるはずだ。

今年初め、トヨタは次世代BEVの動力源として2026年までに導入する新しいリチウムイオンバッテリーを発表した。これを搭載するモデルは、車体をフロント、センター、リアの3つのセクションに分割したモジュラー構造に基づいて開発される。

センターセクションにはバッテリーが収納されるため、急速に進歩するバッテリー技術に大きな変化があっても、このセクションにしか影響しない。

航続距離1000kmのバッテリーは「パフォーマンス版」と呼ばれる。さらに、「普及版」と呼ばれるバッテリーも用意され、既存に比べて航続距離20%向上、30分以内で充電、コスト40%削減を実現するという。

普及版におけるコスト削減は、基本的に2つある電極を1つにまとめる「バイポーラ」構造の採用によるもので、部品点数を20%削減できると言われている。

また、トヨタが2027年か2028年の実用化を目指している全固体電池については、さらに優れた航続距離と10分以内の充電時間を約束している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェシ・クロス

    Jesse Crosse

    英国編集部テクニカル・ディレクター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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