フォルクスワーゲンID.GTI 市販化へ向け開発進行中 全長4.1m、前輪駆動で合成サウンドも 2027年発売予定

公開 : 2023.09.11 18:25

・VWの高性能EVコンセプト「ID.GTI」市販化へ向け開発中。2027年発売へ。
・ポロGTIよりわずかに大きいサイズの前輪駆動ホットハッチ。
・軽快なステアフィール、ダイレクト感を追求。電子デフ活用。

9月2日から10日にかけてドイツで開催されたIAAモビリティ2023において、フォルクスワーゲンは高性能EVコンセプト「ID.GTI」を初公開したが、社内ではすでに市販化に向けた開発が進められている。技術開発責任者のカイ・グリューニッツ氏は、市販モデルのベースとなるMEBエントリー・プラットフォームについて、「GTI気分を味わえるだけのパワーと加速を、このクルマに与えることができる」と述べた。

ID.GTIは、フォルクスワーゲン史上初のフル電動GTIモデルとなる。グリューニッツ氏は走行可能なプロトタイプが存在することを認めており、IAAモビリティ2023で披露されたID.GTIよりもボディサイズとエクステリアデザインの過激さをやや抑えているという。また、「軽快なステアリングフィールと、非常にスムーズなコーナリング」を追求し、電子制御ディファレンシャルによるハンドリングの向上に取り組んでいるとのこと。

VWは長年親しまれた「GTI」の名称をEVにも受け継いでいく方針だ。
VWは長年親しまれた「GTI」の名称をEVにも受け継いでいく方針だ。    AUTOCAR

グリューニッツ氏は「軽快で、ダイレクトで、ダンパーのセッティングによって路面を感じられるようなクルマにしたいと思っています。高速かつスムーズで、ID.2all(次期ID.2)よりも多くのパワーを必要とします」と述べている。

ID.GTIの市販モデルは、ベース車両の次期ID.2と同じサイズのバッテリー(56kWh)を使用するが、適切な電圧と冷却性能を確保するためにハードウェアに変更が加えられる。モーターはアップグレードされ、より大きなパワーを発揮する。

また、内燃エンジンのGTIモデルにインスパイアされた独自の合成サウンドが与えられるが、この機能は任意でオフにすることができる。ただし、一部他社で検討されているようなトランスミッションの変速シミュレートは導入されない。

グリューニッツ氏は「みんなを笑顔にする」という2~3個の特殊なガジェットや機能を開発中であると付け加えた。

ファンに愛されてきた「GTI」を電動化するワケ

ID.GTIは、電動車が主流となった未来においてもGTIの伝統を受け継いでいくというフォルクスワーゲンの所信表明である。「愛されるブランド(Love Brand)」をモットーとする同社にとって、ID.GTIは新時代の草分け的存在となるだろう。

トーマス・シェーファーCEOはフル電動GTIモデルに対する明確な意思表示として、「当社のEV攻勢の一環として量産化がすでに決定しています。GTIはスポーティで、先進的で、親しみやすいモデルであることに変わりはありませんが、未来の世界に向けて新たな解釈を加えました。エレクトリカルで、フル・コネクテッドで、極めてエモーショナルです」とコメント。

ID.GTIは、コンパクトなボディにGTIらしい要素を詰め込んだ。
ID.GTIは、コンパクトなボディにGTIらしい要素を詰め込んだ。    AUTOCAR

フォルクスワーゲンの高性能EVには約2年前から「GTX」という新しい名称が用いられるようになったが、新たにCEOに就任したシェーファー氏は「象徴的な名称を捨て去るのはどうかしている」と発言するなど、ユーザーに長年親しまれてきた「GTI」の名称を残す方針を示していた。ID.GTIはそのコミットメントを具体化したコンセプトカーと言える。

これまでと同様、GTIの名称は前輪駆動の高性能モデルにのみ適用される予定だ。フォルクスワーゲンによると、GTXの名称は引き続き四輪駆動のスポーツモデルに使用され、「R」の名称は最もパワフルなEVにのみ使用されるという。

ID.GTIは、既存のMEBを短縮した「MEBエントリー」と呼ばれるプラットフォームをベースとしている。フロントマウントの電気モーターと「大容量」を謳うバッテリー(ID.2と同じ56kWhの見通し)が搭載される。

性能などの詳細はまだ公表されていないが、ID.GTIと関連性が深いモデルに兄弟ブランドのクプラ・ラヴァルがあり、最高出力230ps、0-100km/h加速6.9秒、航続距離440kmを達成すると謳われている。これはアバルト500e、アルピーヌA290ミニ・クーパー・エレクトリックといったホットハッチのライバルに対して有利に立てる性能だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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