雲の上の存在へ上昇中 オースチン・ヒーレー100 プロトタイプ 英国スポーツの雛形(2)
公開 : 2023.09.24 17:46 更新 : 2024.08.16 06:50
ライト・チューニングされ一層たくましい
走行中は左側のドアがカタカタと鳴る。しっかり組み上がっており、1つの塊のような印象を受けるものの、しなやかさが漂う。
2.7Lエンジンはトルクフル。量産仕様でも同じことはいえるが、ライト・チューニングされたことで、一層たくましい。僅かに速いようだ。
アルミ製のボディが、どの程度軽量化に繋がっているのかはわからない。スチール製より軽いはずだが、素材として柔らかいため、パネル自体は少し厚い。恐らく40kg程度の違いに留まるだろう。
太いトルクで、アクセルペダルを踏まずとも静かにクラッチを繋げる。大きな4本のシリンダーが発生するパワーは線形的で、扱いやすい。ただし、発進時は少々丁寧な操作が必要。駆動系が共振してしまい、跳ねるような挙動を招くことがある。
オーバードライブが付いた3速マニュアルは、連続するカーブで必要なギア比を提供する。2速のままオーバードライブに入れることで、丘陵地帯に伸びる道をまかなえる。
ベースとなったトランスミッションは、オースチンのサルーン、A90用の4速マニュアル。本来ギアは4段分備わるが、1速目が省かれ3速化されている。トップギアでオーバードライブに入れれば、1000rpm当たり約40km/hで走れる。
タイトコーナーでプッシュすると、新しいラジアルタイヤでもオーバーステア気味。グリップが弱めのタイヤでも良いだろう。早い段階でテールスライドへ持ち込めれば、軽快にドリフトできそうだ。
ブレーキは大きなドラム。幅は44mmと細いが、充分な制動力を発揮する。
まだ雲の上の存在にまでは昇り詰めていない
時間を忘れて堪能し、試乗の終わりが迫ることへ気付き寂しい気持ちになる。完成度が高く、ドライバーへ優しい。類まれなブリティッシュ・スポーツだ。ただし、お値段も相応にする。
最初期に製造された、200台のアルミ製ボディをまとうジャガーXK120が、それ以降の量産仕様より高価なことと同様に、アルミ製ボディのヒーレー100もお高い。相当に。
「初期のヒーレー100 Sは55台が作られ、最近は100万ポンド(約1億8100万円)を下りません。プロトタイプのヒーレー100は、19台しか作られませんでした。恐らく、その半額程度には達するでしょうね」。オーナーのディクソンが苦笑いを浮かべる。
100 Sのテスト車輌になったプロトタイプの1台は、2011年12月に開かれたオークションへ出品された。その落札金額は、当時で84万3000ポンド。予想落札額の44万から50万ポンドを、大幅に超えた過去がある。
しかし、同じ場へ出品された左ハンドルのAHX11は、10万2700ポンドで落札された。2015年のオークションでは、4番目に作られた右ハンドル車のAHX19が、レストアされていない状態で16万4300ポンドだった。
ヒーレー100にどの程度の価値を見出すのかは、人それぞれだろう。だが、まだ雲の上の存在にまでは昇り詰めてもいないことを知り、少し胸をなでおろした。
協力:ビル・ロウルズ・クラシック・カーズ社
オースチン・ヒーレー100 プロトタイプ(1953年)のスペック
英国価格:−
製造台数:19台
全長:3835mm
全幅:1537mm
全高:1226mm
最高速度:189km/h
0-97km/h加速:9.3秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:987kg
パワートレイン:直列4気筒2660cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:101ps/4500rpm
最大トルク:20.7kg-m/2000rpm
トランスミッション:3速マニュアル+オーバードライブ(後輪駆動)