象徴的な存在を超えるか アウディRS6 アバント BMW M3 ツーリング 超高性能ワゴンの頂点(1)
公開 : 2023.09.23 20:25
超高性能ワゴンの雄、アウディRS6アバント ひと回り小さな新星、BMW M3ツーリング 注目の2台を英国編集部が比較試乗
アップデートを受けたばかりのRS6 アバント
果たして、下剋上は成し遂げられるのか。AUTOCARでは、歴代初の四輪駆動となったBMW M3のサルーンを、ひと回り小さいアウディRS3と比較した過去がある。
新モデルを評価する場合、直接的なライバルとの差異を確認するより、視野を広げて好敵手になりそうなモデルと比べた方が、新たな発見を得られることが少なくない。クルマ好きは、必ずしもセグメント内で最も有能な1台を選ぶわけではないからだ。
往々にして、なにかの理由で好きになったクルマを選ぶ傾向がある。特に新しいクルマの場合は、一目惚れしたら欲しい気持ちが膨らんでいく。
その比較では、乗る前からBMW M3が筆者のお気に入りだった。案の定、アウディRS3を凌駕する、壮観な動的能力を披露してみせた。しかし、今回は形勢が異なる。2023年の超高性能ステーションワゴンの雄、アウディRS6 アバントが相手だからだ。
このRS6 アバントも、パフォーマンス仕様としてアップデートを受けたばかり。BMW M3 xドライブ・ツーリングがコンペティション仕様だとしても、手強い相手といえる。
渋いナルド・グレーの塗装を、カーボンファイバー製トリムが飾る。大きな荷室を背負うが、最高出力は630psもある。英国価格は11万2285ポンド(約2032万円)もする。
最新M3の走りは間違いないとはいえ、RS2から続く高性能ワゴンの伝統を有し、一目置かれる存在といっていい。ミュンヘンの技術者を持ってしても、象徴的なモデルを打ち負かすことは簡単ではないだろう。
1990年代後半のM5より長く重くなったM3
アウディ・スポーツとBMW Mは、異なるアプローチで走りを磨いたモデルの提供をしている。だが、RS6 アバント・パフォーマンスの内容は、BMW Mの領域に接近しているように思う。
大きなボディを支えるのは、ローズゴールドに染められた、鍛造の22インチ・アルミホイール。タイヤは、ハイグリップなコンチネンタルが組まれる。
4.0L V8ツインターボエンジンにも手が加えられ、増強されただけでなく、パワーデリバリーも改善。刺激的な味わいも追加されている。BMW M5の「CS」が意識されているのではないだろうか。
とはいえ、RS6 アバントはボディが大きく重い。全長はM3 ツーリングより200mmほど長く、車重は235kgも違う。同時に、そのM3 ツーリングも1990年代後半のM5より長く重くなってはいるが。
M3 ツーリングのフロントには2気筒と1.0L少ない、3.0L直列6気筒ツインターボエンジンが載る。最高出力も510psと、120psほど劣る。しかし、パワーウエイトレシオでは肉薄する。0-100km/h加速は3.6秒でこなし、0.2秒だけ遅れるに過ぎない。
現行型のRS6 アバントは、モデルチェンジを控えている。BMWのニューフェイスが、このカテゴリーの新たなチャンピオンへ躍り出る時が来たのだろうか。