象徴的な存在を超えるか アウディRS6 アバント BMW M3 ツーリング 超高性能ワゴンの頂点(1)

公開 : 2023.09.23 20:25

キャンプ場まで荷物を積んで短時間に目指せる

確かにG80型のM3は大きい。サルーンよりツーリングは7mm長い。その事実へ応えるように、BMWはコンパクトなスポーツモデルとしてM2をリリースした。

M3のように、大量販売が期待できない高コストなモデルを何世代も進化させるには、ある程度の犠牲が伴うことは仕方ない。とはいえ、われわれが抱くM3の特長には、一定のコンパクトさも含まれていると思う。

BMW M3 xドライブ・コンペティション・ツーリング(英国仕様)
BMW M3 xドライブ・コンペティション・ツーリング(英国仕様)

道幅のあるアウトバーンだけでなく、狭いワインディングにも適合する必要がある。一般的な1車線の幅員に、余裕を持って収まることが求められる。

その大きさであれば、鋭い操縦性と、落ち着きのある乗り心地が伴うだろう。ある程度の経済性も付いてくるし、車重が過度に増えることはない。

新しいM3 ツーリングは、これらをすべて叶えた「妥当なサイズ」といっていい。コンパクトだとは呼べない。しかし、現代のモデルとして適切な車内空間を与えつつ、納得できる大きさに留めたと表現できる。

G20型へ新しくなった3シリーズが歴代と異なる点は、身長の高い大人2名が快適に過ごせる、リアシートの空間を得たこと。ベースを共にするM3 ツーリングでも、190cmある筆者が快適に座れる。長距離移動も問題なくこなせるはず。

荷室が広大なわけではない。家電を問題なく飲み込むほどのゆとりはないが、家族4名での週末旅行に不満ない容量はある。山奥のキャンプ場まで、荷物を満載して短時間に目指せそうだ。

円熟した落ち着きを漂わせる見た目

他方のRS6 アバントは、快適性を追求するがあまり、必要以上に成長した印象を受けてしまう。そのかわり、リアシートへ大人が3名並んで座っても、圧迫感は少ない。肩をすぼめなくてもいい。

荷室の広さは歴然。カタログ値の容量はM3 ツーリングの500Lに対し565Lと、1割ほど大きいだけだが、テールゲートを開くとそれ以上大きいように感じる。

ナルド・グレーのアウディRS6 アバント・パフォーマンスと、アイル・オブ・マン・グリーンのBMW M3 xドライブ・コンペティション・ツーリング
ナルド・グレーのアウディRS6 アバント・パフォーマンスと、アイル・オブ・マン・グリーンのBMW M3 xドライブ・コンペティション・ツーリング

ホイールアーチの膨らみもなく、形状はスクエア。週末旅行なら、5名分以上の荷物を積めるだろう。もっとも、ボディが大きいのだから車内が広いのは当然。新たな発見とはいえない。

2台を並べて感心したのが、RS6 アバントが円熟した落ち着きのような雰囲気を漂わせること。比べると派手さやアグレッシブさが控えめで、ジェントルな印象すら受ける。

普段使いが前提となるステーションワゴンにとって、これは重要なポイントといえる。M3の巨大なキドニーグリルや、パンプアップされたようなボディライン、少し華やかなインテリアなどは、好き嫌いが分かれるのではないだろうか。

スタイリングの印象は、見る人の主観で大きく違う。穏やかなナルド・グレーと、鮮やかなアイル・オブ・マン・グリーンが生む効果もあるだろう。それでも、違うボディカラーだとしても、目立たない存在とはいえない。

RS6 アバントのインテリアは適度にスポーティで、豪華な素材がふんだんに用いられている。必要なら、スポーツエグゾーストが放つノイズを、社交的なボリュームに抑えることもできる。大人な選択だと思わせる。

この続きは、超高性能ワゴンの頂点(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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