かつてないほど高次元 アウディRS6 アバント BMW M3 ツーリング 超高性能ワゴンの頂点(2)

公開 : 2023.09.23 20:26

超高性能ワゴンの雄、アウディRS6アバント ひと回り小さな新星、BMW M3ツーリング 注目の2台を英国編集部が比較試乗

リアルでドラマチックなV8サウンド

平日の通勤と週末の家族旅行に使えるステーションワゴンとして、今回の2台から選ぶなら、筆者は落ち着いた容姿のアウディRS6 アバント・パフォーマンスを選ぶかもしれない。もっとも、こんな有能なモデルを、それだけで終わらせるのはもったいないが。

RS6 アバントが積む4.0L V8ツインターボエンジンは改良が施され、ドライビング体験の豊かさを増している。フルスロットル時に、リアルでドラマチックなサウンドを与えようとしたアウディの努力は、結果として表れている。

ナルド・グレーのアウディRS6 アバント・パフォーマンスと、アイル・オブ・マン・グリーンのBMW M3 xドライブ・コンペティション・ツーリング
ナルド・グレーのアウディRS6 アバント・パフォーマンスと、アイル・オブ・マン・グリーンのBMW M3 xドライブ・コンペティション・ツーリング

パフォーマンス仕様となったことで燃焼音が大きくなり、高回転域ではフロントバルクヘッド越しに車内へ響く。ドライで威嚇的なエグゾーストノートや、ターボチャージャーの叫びへ、対抗するように。

近年のアウディへ想像する音響より、かなり自然。余計なフィルターが取り除かれたように聞こえる。レッドライン目掛けて回転数を上昇させるほど、迫力も増していく。

トルクは回転域を問わず太い。特徴の薄いフラットさとは異なり、ドライバーが享受する刺激にも不足はない。

630psへパワーアップを果たし、本領を発揮させれば、BMW M3 xドライブ・コンペティション・ツーリングより確かに速いと思う。ただし、明確に引き離せるほどではないだろう。

ドライバーズカーとして秀抜なシャシーが宿る

M3 ツーリングの3.0L直6ツインターボエンジンは、より広いトルクバンドと7200rpmまで吹け上がる特性が、ドライバーを満たす。RS6 アバントと同等以上と表現できる、粘り強さや扱いやすさも備わる。

フルスロットル時の加速は、比較すれば激しくはない。それでも直6エンジンは反応がシャープで、シフトアップまで長く引っ張れる。どちらも動力性能は公道で受け止められる範囲を超えているが、現実環境での速さはRS6 アバントへ肉薄する。

ナルド・グレーのアウディRS6 アバント・パフォーマンスと、アイル・オブ・マン・グリーンのBMW M3 xドライブ・コンペティション・ツーリング
ナルド・グレーのアウディRS6 アバント・パフォーマンスと、アイル・オブ・マン・グリーンのBMW M3 xドライブ・コンペティション・ツーリング

さらにM3 ツーリング最大の魅力は、カリスマチックなエンジンではない。歴代モデルと同様に、素晴らしいドライバーズカーとして、秀抜なシャシーが宿っている。ミュンヘンの高性能モデルとして、しっかりブレていない。

週末旅行に使える荷室を背負っていても、落ち着いたバランスの操縦性は変わらない。改めて堪能してみると、その見事さに開いた口が塞がらない。

これほどのサイズを備えたステーションワゴンが、ここまでのタイトさやシャープさ、フラットさを実現させていることが不思議にすら思えてくる。この点で、RS6 アバントとは別の次元にある。ドライビング体験も異なる。

ダンパーの巧妙な減衰力が、緻密に姿勢を制御。操縦系には鮮明なフィードバックが伴う。身のこなしが敏捷でありながら、限界領域での調整しろも広い。類まれなシャシーに仕上がっている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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