楽しいホットロッド MG4 Xパワー 使い切れるシャシーとパワー アバルト500e 手頃で楽しいEVのベストは?(3)

公開 : 2023.09.27 19:05

バッテリーEVも運転を楽しめる 現在の有能な6台へ英国編集部が比較試乗 現実的な価格帯のコンパクトEV、2023年ベストを選出

羽目を外したようなクルマ MGモーター MG4 EV Xパワー(196点)

自動車メーカーは、時々羽目を外したようなクルマを作る時がある。メルセデス・ベンツは、初代Aクラスに2基の1.9L 4気筒ターボエンジンを詰め込んだ、A 38を生み出した過去がある。

フォルクスワーゲンは、ベントレーに載るW型12気筒エンジンを6代目ゴルフに押し込んだこともある。その結果、GTI W12-650という馬鹿げたホットハッチが生み出された。ただし、コンセプトカーやプロトタイプ止まりという場合が殆どだ。

MGモーター MG4 Xパワー(英国仕様)
MGモーター MG4 Xパワー(英国仕様)

ところが、MGモーターは量産まで振り切った。一見すると、英国では珍しくないMG4と大きくは違わない。5ドアハッチバックの、穏やかな電動ファミリーカーだと感じるだろう。

しかし、MG4 EV Xパワーはツインモーターで、最高出力435psを誇る。0-100km/h加速を3.8秒でこなす。数字だけを見れば、ポルシェ911 カレラを上回る。そして不思議なことに、今回の6台では最も安価な価格で英国では売られている。

この事実を確認すれば、3位の得点を獲得したと聞いても不思議ではないだろう。だが優勝には届かなかった。正確性や方向性が、今ひとつ磨き込まれていないためだ。

スリル満点な走りが楽しいホットロッド

MG4 EV Xパワーはロケットのように速く、英国郊外の起伏が多い路面を流暢にこなす。一方でサスペンションは柔らかすぎ、操る自信を抱きにくい。パワーデリバリーも、もう少し洗練されていいだろう。

英国の電気自動車としては安価な、3万6495ポンド(約660万円)という値段を考えれば、動力性能に見合う高性能なダンパーを奢ることは難しいのだろう。スプリングレートが、通常のMG4より15%高められただけに過ぎないそうだ。

手前からグリーンのMGモーター MG4 Xパワーと、グレーのルノー・メガーヌ E-テック・エレクトリック・テクノ
手前からグリーンのMGモーター MG4 Xパワーと、グレーのルノーメガーヌ E-テック・エレクトリック・テクノ

パワーを追求したホットロッド的といえ、本当の意味でのドライバーズカーとは呼べない。もしかすると、ベーシックなMG4の方が高得点を狙えたかもしれない。

とはいえ、スリル満点な走りが楽しいことも事実。もう少し、アイデアが練られるべきだったといえる。

MGモーター MG4 Xパワー(英国仕様)のスペック

英国価格:3万6495ポンド(約660万円)
全長:4287mm
全幅:1836mm
全高:1504mm
最高速度:199km/h
0-100km/h加速:3.8秒
航続距離:384km
電費:5.3km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:1800kg
パワートレイン:ツインAC永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:61.8kWh
最高出力:435ps(システム総合)
最大トルク:61.1kg-m(システム総合)
ギアボックス:シングルスピード・リダクション(四輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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