モータージャーナリストになるには? クルマを運転し、クルマについて書くという仕事 自動車評論家とは

公開 : 2023.09.23 18:05

モータージャーナリストに求められる能力

まずは鏡をじっくり見て、自分に正直になろう。この仕事に就こうとわたしに相談する人のほとんどは、ロードテスター(クルマに試乗し、評価する人)になりたがっている。しかし、この仕事にはささやかな報酬のために長時間働く覚悟と、好奇心旺盛で一風変わったスキルが要求される。一定レベル以上のドライビングと文章作成ができなければならないだけでなく(それ自体、才能の組み合わせとしては一般的とは言えない)、競合車と比較した場合のクルマの挙動を正確に分析できなければならないのだ。

スウェーデンの偉大なドライバーであった故ロニー・ピーターソン氏は、ロータスのF1マシンがコース上でどのような挙動を示すかについて中身のあるフィードバックを提供することがまったくできず、レースエンジニアたちをうんざりさせたという。それでも、後にも先にもないドライビングの才能があったからこそ、彼は現役を続けられたのだ。しかし、わたし達の世界では、それだけでは不十分なのだ。

ビデオカメラを設置するAUTOCARカメラマン、ジャック・ハリソン。
ビデオカメラを設置するAUTOCARカメラマン、ジャック・ハリソン。    AUTOCAR

この仕事をするためには、速く安全に運転する能力が必要だが、セミプロのレーシングドライバーである必要はない。実際、ロードテスターのほとんどはレースに出ることなくキャリアを終えるが、これは通常、金銭的な余裕がないためである。仕事においては、それはまったく問題ではない。実際に重要なのは、自分の意見が一貫していて信頼できるかどうか、そしてそれをうまく伝えられるかどうかなのだ。

この仕事で絶対に譲れないのは、文章を書く能力だ。ドライバーとしては素晴らしいのに、この仕事で成功していない人もいる。一方で、ドライビングはそれなりに上手い程度だが、読者を惹きつけ、シンプルかつ楽しく自分の考えを伝える方法を知っている人もたくさんいる。この業界で必要な資質があるとすれば、それである。

モータージャーナリストになる方法

この世界に入る道はいくらでもあるが、英国を例に挙げると、コベントリー大学の自動車ジャーナリズム修士課程を受講するのがおそらく最も確実な道であろう。同じような志を持つ人たちと人脈を築くこともできる。もちろん、大手メディアのSNSアカウントはフォローしておくべきだろう。というのも、新しい仕事はまずここで募集されるからだ。しかし、ただ座って何かが起こるのを待っている人は、そのまま待ち続けることになるだろう。

腰を上げ、自らチャンスを掴もう。好きな出版社に連絡を取り、職業体験を依頼する。オファーがあったら、一番最初に着いて一番最後に帰るようにすること。何をすべきか指示をもらうのを待ったり、尋ねたりする必要はなく、ただ取りかかればいい。編集者はもちろん才能を求めているが、雑誌やウェブサイトの熱狂的なハイペースに自分で対処できる積極的な人材も求めている。プレスリリースに目を通し、ネタを見つけ、記事を書く。編集者に見せれば、たとえ記事が採用されなくても、その努力を認めてくれるはずだ。

EV比較テストで各車両の前に集まったロードテスターたち。
EV比較テストで各車両の前に集まったロードテスターたち。    AUTOCAR

本質的には、どの編集者も素晴らしい新しい才能を探しているのであり、その才能を引き抜かなければ、ライバルの誰かに獲られてしまう可能性が高いという事実を念頭に置いている。だから、あなたがそのような人物であることを、あらゆる方法で伝えることが大切だ。そうして、過労で低賃金でフルタイムのモータージャーナリストになることができれば、何年経っても変わらない不変の真実に気づくだろう。ある種の好奇心旺盛な人にとっては、この広い世界で最高の仕事であるということに。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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