グループ5プロトに続く総合4位 ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7(1) 推定9億円以上

公開 : 2023.10.01 17:45

917用ホイールとブレーキを包むフェンダー

とはいえ、トーションバーなどを除き、殆どのコンポーネントが特別だった。ストラットのトップマウントに調整機能が追加され、専用のアンチロールバーとクイックなステアリングラックで身のこなしを引き締めた。

カレラRSRで最大の変更点といえたのが、917をベースとしたブレーキ。クロスドリル加工されたベンチレーテッド・ディスクに、冷却フィン付きの4ポッドキャリパーという構成で、バランス調整機能も備わっていた。

ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7(1973年式)
ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7(1973年式)

これを隠すように、フロントが9J、リアが11Jという、ワイドなフックス社製のアルミホイールが組まれた。特別なワークスマシンのR7は、917と同じ11Jと14Jという、極太のセンターロック・ホイールで武装していた。

そのタイヤを包むべく、フェンダーも壮観なほどに広げられた。スコットランド女王の衣装にちなんで、英国では「メアリー・スチュアート」と呼ばれる、リアウイングも載せられた。いつも以上に、グッドウッドのコースサイドが近く感じる理由でもある。

シャシーを入念に補強した結果、重量は増えた。これを相殺するため、前後のフェンダーには薄いスチールを採用。エンジンリッドとボンネット、一体型のフロントバンパーはFRPで成形され、フロントガラスも薄肉化された。

最終的に、車重は839kgに仕上がった。カレラRS 2.7 ライトウェイトより、80kg近く軽かった。

ル・マン用エンジンは最高出力334ps

1973年シーズンに、ポルシェは3種類の水平対向6気筒エンジンをカレラRSRで試している。いずれも、RS用のドライサンプ空冷オールアルミ・ユニットがベース。ミュルザンヌ・ストレートを290km/hで疾走できるほど強力で、耐久性は高かった。

1種類目がタイプ911/72。当初はワークスチームも用いたが、主にプライベートチームのRSRに積まれ、ボアを2mm広げることで2806ccの排気量を得ていた。ニカシル加工されたシリンダーライニングには、マグネシウムではなくアルミが用いられた。

ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7(1973年式)
ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7(1973年式)

コンロッドにはチタンを採用。ピストンは鍛造で、圧縮比は8.5:1から10.3:1へ向上した。バルブは大きくなり、専用のボッシュ社製機械式インジェクションがガソリンを供給。ヘッドはツインスパーク化され、カムシャフトは4枚のベアリングが支えた。

完璧なサーキット・パッケージといえる内容で、最高出力は312ps/8000rpmを達成。最大トルクは29.9kg-m/6200rpmで、カレラRSから大幅な強化を実現していた。

さらに、ワークスマシンのR用ユニットが誕生したのは1973年4月。タイプ911/74と呼ばれ、排気量は2993ccへ拡大。最高出力は319psへ強化されていた。

ル・マン24時間レースへ向けて開発されたのが、タイプ911/75。一層高度なチューニングが施され、R7の場合は334psまで引き上げられていた。

この性能差を踏まえ、ポルシェのワークスチームは1973年のル・マン24時間レースをプロトタイプ・クラスで戦った。通常のRSRで挑んだプライベートチームにも、クラス優勝の可能性が残された。

この続きは、ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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