ミュルザンヌを290km/hで疾走 ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7(2) 1973年ル・マンで総合4位

公開 : 2023.10.01 17:46

市販の911をベースに極限の性能が追求されたRSR R7 グループ5プロトタイプへ迫る速さ 1973年のル・マンを戦った1台を英国編集部がご紹介

1973年のデイトナ24時間レースでR4が優勝

ポルシェ911 カレラRSRは、見事な戦いを披露した。1972年のフランスで開催されたツール・ド・コルス・ラリーへ試験的に参戦したが、正式なデビュー戦は1973年2月のアメリカ・デイトナ24時間レース。世界スポーツカー選手権の第1戦を兼ねていた。

ワークスチームからはRSR R3とR4がエントリーし、ピーター・グレッグ氏とハーレー・ヘイウッド氏のペアによるR4が優勝。2位のフェラーリ365 GTB/4Cへ、22周の差をつけてのゴールだった。以降、そのシーズンでは上位へランクインし続けた。

ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7(1973年式)
ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7(1973年式)

マルティーニ・カラーのRSRが姿を表したのは、1973年のイタリア・ヴァレルンガ6時間レース。1-2フィニッシュを成し遂げている。

3.0Lのタイプ911/74ユニットを積んだRSRは、イタリア・モンツァ1000kmレースから投入。R6とR8がグループ5で戦うが、リタイアに終わった。

遅れて完成したRSR R7が結果を残したのは、ドイツ・ニュルブルクリンク1000kmレース。グループ5仕様に仕立てられ、チタン製ハブとフロント11J、リア14Jのセンターロック・ホイールで武装し、予選15位、本戦7位の成績を残している。

この時点で、ワークスチームのRSRには更なるアップデートが施されていた。サスペンションのベアリングやトランスミッション、ダンパーは専用品となり、リアのトレーリングアームも強化品が組まれた。

サスペンションのスプリングは、軽量なチタン製。ファイアウォールには、ダブルスキンのリアクロスメンバーが溶接され、ボディも強化されていた。

F1から派生したプロトタイプに次ぐ4位

そして1973年で最大の注目レースとなったのが、ル・マン24時間レース。先述の通り、プロトタイプ・クラスで挑み総合4位という結果を勝ち取った。

RSR R7のドライバーは、ヘルベルト・ミューラー氏とジィズ・ヴァン・レネップ氏のペア。ほかにワークスチームからはR2とR6が参戦。グループ4クラスでは、2台のプライベートチームがタイプ911/72ユニット版のRSRで挑んだ。

ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7(1973年式)
ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7(1973年式)

予選で18位に入ったR7は、本戦の3時間後には7位へジャンプアップ。翌朝9時に総合4位へ躍り出ると、そのまま7時間後のチェッカーフラッグまで順位を維持。素晴らしい結果を残したといっていい。

RSR R7を破ったのは、車重が250kgも軽いF1マシンから派生したプロトタイプ。マトラ・シムカMS670Bが優勝と3位、フェラーリ312 PBが2位を掴んだ。

その後、RSR R7はオーストリア・ツェルトベク1000kmレースへ参戦。続いてアメリカへ渡り、ワトキンスグレン6時間レースでは7位に入賞している。カンナム・レースは9位で終えた。

ワークスマシンとして役目を終えたRSR R7は、メキシコ出身のレーシングドライバー、ヘクトール・レバーク氏が購入。いくつかのレースを戦った後、イタリア人カーコレクターのマッシモ・バリバ氏が買い取り、ガレージで眠りにつかせた。

この間、RSR R7は表に出ることが殆なく、破壊されたという噂が流布。精巧なレプリカが作られるに至った。ちなみにこのレプリカは、オリジナルをバリバが手放した際、本物かどうかを巡って裁判になっている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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