3色ストライプに巨大スカート BMW 530 MLE(E12型) 南アフリカで生まれたM5の起源(1)
公開 : 2023.10.07 17:45
レース参戦のため短期間で準備された特別な5シリーズ 3.0L直6はチューニングで200ps M5の起源といえる南アフリカ仕様を英編集部がご紹介
モータースポーツでの活躍が販売へ影響
今では想像しにくいが、1970年代から1980年代にかけて、モータースポーツは驚くほどの人気を世界的に集めていた。それへ後押しされるように、強力なエンジンを載せた数多くのホモロゲーション・モデルが作られていた。
遡ること1976年、BMW南アフリカ(SA)は、ドイツ本国へ先駆けて高性能なサルーンを提供していた。スーパーカーのM1が発表される2年前に、Mモデルの原型と呼べる5シリーズが誕生していたのだ。
1966年、BMWは旧西ドイツの自動車メーカー、ハンス・グラース社を買収。南アフリカへ中型サルーンのグラース1700を製造する設備が運ばれ、エンジンとロゴを置き換え、子会社のBMW SAが新モデルとして生産することになった。
これは、当初BMW 1800と2000を名乗っていたが、後に1804と2004へ改名されている。一方、ドイツのディンゴルフィンク工場では新しいE12型5シリーズ、520と525、528の生産がスタートした。
その頃、市販車をベースとしたレーシングカーの活躍が、販売へ大きな影響を与えていた。フォードとマツダ、日産は、南アフリカに設備の整ったファクトリー・チームを擁していた。
新しい5シリーズも、重要な新市場の1つ、南アフリカへの輸出が想定されていた。しかし528は車重がかさみ、充分な競争力を見込めなかった。BMW モータースポーツ社、後のBMW M社が誕生したのは1972年。まだ態勢も充分とはいえなかった。
M30型ユニットが搭載された5シリーズ
小さなクーペのE3型2002と、大きなクーペのE9型3.0 CSLが頭角を現し始めていたが、Mを冠した高性能モデルは生まれる前。そんな中、BMW SAの要望へ応えるべく、BMW モータースポーツ社は特別な5シリーズを用意する。
フロントに搭載されていたのが、ツインキャブレターで2986ccのM30型・直列6気筒ユニット。BMW モータースポーツ社は、既にM30型ユニットを搭載した5シリーズをドイツで開発しており、理にかなったパッケージといえた。
BMW SAは開発期間を大幅に短縮でき、さらにチューニングを加え、279psの最高出力を引き出した。果たしてその5シリーズは、デビュー直後からサルーンカー・レースで圧倒的な強さを披露した。
1977年シーズンは、15戦15勝という完全勝利。1979年にかけて、3年連続で総合優勝を奪った。1980年代まで、南アフリカでその強さは保たれた。
ただし、サルーンカー・レースへ参戦するには、市販車を100台以上製造している必要があった。この規定をクリアするべく、1976年から提供されたのが、今回ご紹介する530 モータースポーツ・リミテッドエディション(MLE)だ。
基本的には、M30型ユニットが搭載されたE12型の5シリーズといえ、近年の例と比べれば簡素なホモロゲーション・モデルではある。それでも、BMW SAの手で戦闘力はしっかり高められていた。
画像 南アフリカで生まれたM5の起源 BMW 530 MLE(E12型) M1に2002ターボ、3.0 CSL 最新M5も 全105枚