3色ストライプに巨大スカート BMW 530 MLE(E12型) 南アフリカで生まれたM5の起源(1)

公開 : 2023.10.07 17:45

トリコロールのストライプ 軽量化のランダムな穴

まず目がいくのは、現在のMモデルでも見慣れたトリコロール・カラーのストライプだろう。レッドとブルー、パープルの3色が、ボディをぐるりと彩る。ホワイトのボディをキリリと引き締めている。

当時のBMWは、レーシングカーを想起させるカラーリングを市販モデルへ与え始めていた。2002ターボも同様のストライプで飾られている。しかし、ストライプだけで仕立てられたモデルは、530 MLEが初めてだった。

BMW 530 MLE(1976〜1977年/南アフリカ仕様)
BMW 530 MLE(1976〜1977年/南アフリカ仕様)

フロントとリアに追加された、プラスティック製の大きなスポイラーが最大の特長だろう。フロントバンパー下のスカートは、数年後にリリースされるM535iとデザインはほぼ同一。路面へ迫るように、下部が前方へ突き出ている。

リアスポイラーは、ダックテール・スタイル。フロント側と比べるとサイズは小さめで、トランクリッドへ接着剤で直接貼り付けられている。それでも主張は強い。

トランクリッドを開くと、軽量化のためにランダムに打ち抜かれた穴が、目に飛び込んでくる。本来、E12型のバッテリーはヘッドライトの後方へ載るが、重量バランスを考え荷室内へ移されている。

ドアを開くと、公道レーサー的な雰囲気は控えめになる。ダークブルーのベロア生地で仕立てられたシートは座り心地が良く、1975年の3.0 CSLに組まれたバケットシートほど、彫りが深くない。

ドアパネルやフロアカーペットもダークブルー。上級サルーンの雰囲気が漂う。ステアリングホイールは、3スポークでスポーティ。イタルヴォランティ社製で、現在はセンターボスが省かれている。

30km/hを超えた辺りから様子が変わる

サルーンカー・レースを戦ったマシンと異なり、530 MLEの直列6気筒エンジンは専用カムと高圧縮ピストンでマイルドに強化。同時期の530比で約20ps増しとなる、200psを発揮した。

トランスミッションはショートレシオ化。今回のクルマには、ツイン・ゼニスキャブレターではなく、トリプル・ウェーバーキャブレターが載っている。恐らく、オリジナルより若干速いはず。

BMW 530 MLE(1976〜1977年/南アフリカ仕様)
BMW 530 MLE(1976〜1977年/南アフリカ仕様)

実際に公道を走らせてみると、低速域では操縦系が重く感じられる。シフトレバーは1速へ押し込むのに力が必要で、軽さを求めてステアリングにはパワーアシストが備わらない。クラッチペダルも、繊細に扱うには硬すぎる。

低回転域での加速は、Mモデルの起源へ期待するより遅い。0-97km/h加速は9.3秒と驚くような数字ではなく、確かに出だしは少々鈍い。

ところが2速へシフトアップし、30km/hを超えた辺りから様子が変わる。まるでボディが軽くなったように、活発さを増していく。アクセルレスポンスは非常に鋭敏で、まさに意のままにスピードを求めていける。

車重は、この大きさのサルーンとしては少ない1233kg。3.0Lの直列6気筒エンジンをもってすれば、余裕で扱える質量だ。

ボディは各部が軽量化され、遮音性は低い。ガラスは薄肉化され、パワーウインドウもも省かれている。リアシートはクッションだけで、スチール製のフレームは組まれていない。約150kgのダイエットに成功している。

この続きは、BMW 530 MLE(E12型) 南アフリカで生まれたM5の起源(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェイソン・フォン

    Jayson Fong

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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