3色ストライプに巨大スカート BMW 530 MLE(E12型) 南アフリカで生まれたM5の起源(1)
公開 : 2023.10.07 17:45
トリコロールのストライプ 軽量化のランダムな穴
まず目がいくのは、現在のMモデルでも見慣れたトリコロール・カラーのストライプだろう。レッドとブルー、パープルの3色が、ボディをぐるりと彩る。ホワイトのボディをキリリと引き締めている。
当時のBMWは、レーシングカーを想起させるカラーリングを市販モデルへ与え始めていた。2002ターボも同様のストライプで飾られている。しかし、ストライプだけで仕立てられたモデルは、530 MLEが初めてだった。
フロントとリアに追加された、プラスティック製の大きなスポイラーが最大の特長だろう。フロントバンパー下のスカートは、数年後にリリースされるM535iとデザインはほぼ同一。路面へ迫るように、下部が前方へ突き出ている。
リアスポイラーは、ダックテール・スタイル。フロント側と比べるとサイズは小さめで、トランクリッドへ接着剤で直接貼り付けられている。それでも主張は強い。
トランクリッドを開くと、軽量化のためにランダムに打ち抜かれた穴が、目に飛び込んでくる。本来、E12型のバッテリーはヘッドライトの後方へ載るが、重量バランスを考え荷室内へ移されている。
ドアを開くと、公道レーサー的な雰囲気は控えめになる。ダークブルーのベロア生地で仕立てられたシートは座り心地が良く、1975年の3.0 CSLに組まれたバケットシートほど、彫りが深くない。
ドアパネルやフロアカーペットもダークブルー。上級サルーンの雰囲気が漂う。ステアリングホイールは、3スポークでスポーティ。イタルヴォランティ社製で、現在はセンターボスが省かれている。
30km/hを超えた辺りから様子が変わる
サルーンカー・レースを戦ったマシンと異なり、530 MLEの直列6気筒エンジンは専用カムと高圧縮ピストンでマイルドに強化。同時期の530比で約20ps増しとなる、200psを発揮した。
トランスミッションはショートレシオ化。今回のクルマには、ツイン・ゼニスキャブレターではなく、トリプル・ウェーバーキャブレターが載っている。恐らく、オリジナルより若干速いはず。
実際に公道を走らせてみると、低速域では操縦系が重く感じられる。シフトレバーは1速へ押し込むのに力が必要で、軽さを求めてステアリングにはパワーアシストが備わらない。クラッチペダルも、繊細に扱うには硬すぎる。
低回転域での加速は、Mモデルの起源へ期待するより遅い。0-97km/h加速は9.3秒と驚くような数字ではなく、確かに出だしは少々鈍い。
ところが2速へシフトアップし、30km/hを超えた辺りから様子が変わる。まるでボディが軽くなったように、活発さを増していく。アクセルレスポンスは非常に鋭敏で、まさに意のままにスピードを求めていける。
車重は、この大きさのサルーンとしては少ない1233kg。3.0Lの直列6気筒エンジンをもってすれば、余裕で扱える質量だ。
ボディは各部が軽量化され、遮音性は低い。ガラスは薄肉化され、パワーウインドウもも省かれている。リアシートはクッションだけで、スチール製のフレームは組まれていない。約150kgのダイエットに成功している。
この続きは、BMW 530 MLE(E12型) 南アフリカで生まれたM5の起源(2)にて。
画像 南アフリカで生まれたM5の起源 BMW 530 MLE(E12型) M1に2002ターボ、3.0 CSL 最新M5も 全105枚