英国政府 ガソリン車の販売禁止、5年延期 「現実的」と首相、各方面から批判も
公開 : 2023.09.22 06:45
・英国政府は内燃エンジン車の新車販売禁止を2030年から2035年に延期。
・スナク首相は「欧州と足並みを揃え、国民の負担を抑える」ためと説明。
・EVのコストやインフラに課題。しかしメーカーなどからは批判の声も。
内燃エンジン車は2035年まで販売可能に
英国のリシ・スナク首相は、ガソリンエンジン車およびディーゼルエンジン車の新車販売の禁止について、2030年から2035年に延期することを明らかにした。内燃エンジン車から電気自動車(EV)への移行が5年遅れることになる。
これまでの計画では2030年に施行され、「大幅なゼロ・エミッション走行」が可能な一部のハイブリッド車のみ2035年まで認められることになっていた。EVへの移行を推進していたが、スナク首相は一連の気候変動政策を見直し、5年の延期を決定した。しかし、2050年までにCO2排出量のネット・ゼロを目指すという目標は変わらないとしている。
スナク首相は声明の中で、「我々は英国をEVの世界的リーダーにするために努力している」とし、「すでに数十億ポンドの新規投資を誘致している」と述べた。
「2030年までには、販売される自動車の大半がEVになるとわたしは期待しています。なぜなら、コストが下がり、航続距離が伸び、充電インフラが成長しているからです。また、少なくとも現時点では、その選択をするのはあなた自身であるべきで、政府がそれを強制すべきではないと思います。なぜなら初期費用が高いからです。充電インフラを整備するにも、まだまだ時間がかかります」
「そのため、準備する時間を増やすために、EVへの移行を緩和するつもりです。2035年までは、まだ内燃エンジン車を買うことができます」
スナク首相は、2035年という期限を設けることで英国はEUやカナダを含む他の国々と足並みを揃えることになると指摘した。欧州では2035年に内燃エンジン車の新車販売を禁止する計画だが、英国はひと足早く2030年を期限としていた。
首相はまた、2035年以降も既存のガソリンエンジン車やディーゼルエンジン車の中古車販売を認めると宣言した。
2050年のネット・ゼロ目標に対する英国政府の取り組みについて、スナク首相は「非現実的」な政策で国民に「負担」をかけることなく達成できると考えていると述べた。
その上で、「テストすべきは、2050年までに国民を味方につけながらネット・ゼロに到達するための、最も公平で信頼できる道筋があるかどうかということです。わたしが首相に就任して以来、(以前の)計画を検証してきましたが、そのテストに合致するとは思えません」とも述べた。一方で、英国は国際的な気候変動目標の約束をすべて果たすことは「明確」であるとした。
内燃エンジン車の禁止措置の延期がどのように実施されるのか、また、今後数年間で自動車メーカーにゼロ・エミッション車の販売を義務付けるZEV(ゼロ・エミッション車)義務化計画にどのような影響を与えるかは、まだ不明である。
英国でのEVの販売台数は近年急増している。8月には自動車販売の20.1%を占め、前年同月比72.3%増となった。しかし、こうした販売の大半はフリート(レンタカー業界)やビジネス顧客向けであり、価格上昇に尻込みする個人購入者の需要軟化が懸念されている。英国政府は現在、EVの購入を奨励するインセンティブや補助金を導入していない。