重宝がられた秀でた実力 フォルクスワーゲン・マルチバン 長期テスト(最終) 滑らかな走り

公開 : 2023.10.01 20:25

VWの7シーター・ミニバン、マルチバン。初代タイプIIをご先祖に持つ最新版の実力を、英国編集部がじっくり確かめます。

積算3万2259km アウディA3と同じMQBが基礎骨格

フォルクスワーゲン・マルチバンほど、長期テストで重宝がられたクルマは少ない。それ故に、トラブルも少なくなかったけれど。

英国編集部へクルマが届いてすぐ、同僚もメンバーになっているバンドのツアーバスとして駆り出され、グレートブリテン島を3000km以上走り回った。その後は新モデルの試乗取材などで、撮影車両として活躍してくれた。

フォルクスワーゲン・マルチバン 1.4TSI eハイブリッド 218ps スタイル(T7/英国仕様)
フォルクスワーゲン・マルチバン 1.4TSI eハイブリッド 218ps スタイル(T7/英国仕様)

このマルチバンは、戦後間もない頃に登場したフォルクスワーゲン・タイプ2の直接的な後継モデルに当たる。同社は3種類のワンボックスカーを提供しているが、T7を名乗ることがその証。電気自動車のID.バズが、デザイン的には近いとはいえ。

マルチバンで最大の特長といえるのが、アウディA3なども採用する、フォルクスワーゲン・グループのMQBプラットフォームを基礎骨格としていること。成り立ちが、商用車とは一線を画している。

それでも、車内空間はスクエアで広大。英国の場合、修理部品などは同社の商用車部門が管轄となる。

パワートレインは、150psの1.4L 4気筒ガソリン・ターボエンジンに115psの駆動用モーターが組み合わされた、プラグイン・ハイブリッド。システム総合で218psを発揮する。

フロア下に13kWhの駆動用バッテリーが敷かれ、カタログ上はエンジンを回さずに最長78kmを走れる。充電は、一般的な7kWのものでも、数時間あれば終えられる。

走りは滑らか 乗り心地はしなやか

ドライブモードは複数用意されているが、始動時のデフォルトはEVモード。ハイブリッド・モードへ切り替えれば、ガソリンエンジンを使用し、バッテリーの消費を抑えることもできる。これは、一般的なプラグイン・ハイブリッドと同様だ。

長期間運転してみた結果、フル充電状態でEVモードが持続されるのは、平均で24km程度。それ以降は、自動的にハイブリッド・モードになりエンジンが働き出す。ただし、市街地ではもう少し長く走れる。

フォルクスワーゲン・マルチバン 1.4TSI eハイブリッド 218ps スタイル(T7/英国仕様)
フォルクスワーゲン・マルチバン 1.4TSI eハイブリッド 218ps スタイル(T7/英国仕様)

ハイブリッド・モードでは、駆動用バッテリーに電気が残っている範囲、75km前後までなら約19.5km/Lの燃費を得られる。バッテリーが空になると、燃費は13.0km/L前後まで落ちる。

利用スタイルによっては、ディーゼルターボの方が経済的かもしれない。乗られる地域の税金体系によっても、ランニングコストは変わってくるだろう。

難しいことは置いておいて、マルチバンは非常に快適だった。洗練されていると表現できる質感を生んでいる理由は、プラットフォームによるところが大きいだろう。

車重は2243kgあり、ボディサイズは全長4973mm、全幅1941mm、全高1907mmと大きい。にも関わらず、走りは滑らかで、乗り心地はしなやか。運転が楽しいとまではいえないにしろ、何か我慢を求められるわけではない。素直で扱いやすい。

そんな特性だから、同僚から引っ張りだこだった。おかげで、ボディにはキズが耐えなかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

長期テスト フォルクスワーゲン・マルチバンの前後関係

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