重宝がられた秀でた実力 フォルクスワーゲン・マルチバン 長期テスト(最終) 滑らかな走り

公開 : 2023.10.01 20:25

ガラスとタイヤを交換 モニターはブラックアウト

最初の事件は、フロントガラスの飛び石キズ。荒れた路面でストレスが加わり、気温が冷えた数日後に大きなヒビへ広がってしまった。ガラス代は620ポンド(約11万2000円)。ガラス修理の専門店へ作業を依頼し、120ポンド(約2万2000円)で治った。

ドアが凹んだこともあった。同僚へ確認したが、恐らく誤ってキーフォブのボタンを押してしまい、電動スライドドアが開き、近くの荷物へ接触したことが原因のようだ。複数のクルマのキーがごちゃ混ぜに箱へ入っている、管理方法に問題があるといえる。

TVRの工場前に停まるフォルクスワーゲン・マルチバン
TVRの工場前に停まるフォルクスワーゲン・マルチバン

幸いにも、フォルクスワーゲンの本社で修理を済ませていただいた。板金店へ修理に出していたら数100ポンド(数万円)は掛かっていただろう。

フロントタイヤがパンクした時は、修理キットで応急処置。なんとか持ちこたえ、翌日、140ポンド(約2万5000円)で新しいブリヂストン・トゥランザへ交換となった。もっとも、これらはクルマに非があるわけではない。

インフォテインメント用タッチモニターが、動かなくなったことも。運転は可能だったものの、2日間ブラックアウトし、ラジオやエアコン、運転支援システムの多くが機能しなくなった。

いざ、ディーラーを尋ねる日になると復調。しばらく正常に動作していたが、後日再発している。

他のユーザーの報告を見ても、長期テスト車両に限ったトラブルではない様子。英国では数少ない、極めて実用的なワンボックスカーの1台なだけに、技術的な不具合は早々に解決されることを望みたい。

セカンドオピニオ

実際に運転するまで、商用バン的な走りを想像していたが、落ち着いた乗り心地と曖昧ではない身のこなしに驚かされた。プラグイン・ハイブリッドのパワートレインも、非常に完成度が高いといえる。

英国で乗るには少々大きすぎる、と感じる人もいるだろう。実用性に優れるとはいえ、都市部での運転には気を使ってしまうサイズだ。 クリス・カルマー

フォルクスワーゲン・マルチバン 1.4TSI eハイブリッド 218ps スタイル(T7/英国仕様)
フォルクスワーゲン・マルチバン 1.4TSI eハイブリッド 218ps スタイル(T7/英国仕様)

テストデータ

気に入っているトコロ

多機能なシート:重たいものの、取り外しが可能。レールに沿ってスライドし、回転もする。撮影車両やポッドキャストの録音スタジオとしても活躍した。
ステアリングホイール上のボタン:車線維持支援システムのスイッチが、ステアリングホイール上にある。ワンタッチでオン・オフを切り替えられる。
スライドドアとフラットなフロア:壁へ寄せて駐車しても大丈夫。運転席から立って移動し、スライドドアから降りることができる。

気に入らないトコロ

充電ポートの位置:車載の充電ケーブルが短いうえに、ポートの位置がフロントの右側にある。自宅の駐車場で充電する場合、前から突っ込んで停める必要があった。
インフォテインメント・システム:タッチモニターが動かなくなると、エアコンなども使えなくなる。

走行距離

フォルクスワーゲン・マルチバン 1.4TSI eハイブリッド 218ps スタイル(T7/英国仕様)
フォルクスワーゲン・マルチバン 1.4TSI eハイブリッド 218ps スタイル(T7/英国仕様)

テスト開始時積算距離:1万8314km
テスト終了時積算距離:3万2259km

価格

モデル名:フォルクスワーゲン・マルチバン 1.4TSI eハイブリッド 218ps スタイル(T7/英国仕様)
開始時の価格:5万9545ポンド(約1077万円)
現行の価格:5万9545ポンド(約1077万円)
テスト車の価格:6万6619ポンド(約1197万円)

オプション装備

ツートーン塗装:2700ポンド(約48万9000円)
パノラミック・ガラスルーフ:1500ポンド(約27万1000円)
パワーシート:1500ポンド(約27万1000円)
ハーマン・カードン・ハイファイオーディオ:1080ポンド(約19万5000円)
ディスカバープロ・ナビ&インフォテインメント:294ポンド(約5万3000円)

燃費&航続距離

カタログ燃費:52.6-55.5km/L
タンク容量:45L
駆動用バッテリー:13kWh
平均燃費:13.4km/L
最高燃費:19.6km/L
最低燃費:12.3km/L
航続可能距離:642km(24km/駆動用バッテリー)

主要諸元

全長:4973mm
全幅:1941mm
全高:1907mm
最高速度:191km/h
0-100km/h加速:9.0秒
車両重量:2243kg
パワートレイン:直列4気筒1395ccターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:218ps(システム総合)
最大トルク:25.3kg-m(システム総合)
ギアボックス:6速デュアルクラッチ・オートマティック
トランク容量:469-3672L
ホイールサイズ:17インチ7.5J
タイヤ:235/55 R17

メンテナンス&ランニングコスト

リース価格:685ポンド(12万4000円/1か月)
CO2 排出量:41-43g/km
メンテナンスコスト:275ポンド(約5万円)
その他コスト:740ポンド(約13万4000円/フロントガラス)、140ポンド(約2万5000円/タイヤ)
燃料コスト:1487ポンド(26万9000円/ガソリン)+104ポンド(1万9000円/電気)
燃料含めたランニングコスト:2746ポンド(49万7000円)
1マイル当りコスト:0.22ポンド(39円)
不具合:インフォテインメント・システムの不調

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

長期テスト フォルクスワーゲン・マルチバンの前後関係

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