見た目で選んでも◯ フィアット600eへ試乗 航続距離408km イタリア車らしいクロスオーバー

公開 : 2023.10.10 19:05

ジープ・アベンジャーの兄弟モデル、600eが登場 500e譲りのスタイリング 充分なバッテリーEVとしての実力 英国編集部が試乗

プラットフォームはアベンジャーと同じe-CMP2

いかにもイタリア車らしい、フィアット600eが登場した。ミケランジェロなど数多くの芸術家を生み出し、美味しいイタメシを育んできた土地は、著名なサッカー選手だけでなく、フェラーリランボルギーニランチアなど、数多くの名車も排出している。

イタリア固有の、ドラマチックとすら表現できる風土は、他の国が真似できるものではない。トリノ・リンゴット工場の屋上で新車のテストを繰り返してきた、フィアットもその一員だ。

フィアット600e ラ・プリマ(欧州仕様)
フィアット600e ラ・プリマ(欧州仕様)

600eのリアバンパーには、誇らしくイタリアン・トリコロールが刻まれている。選べるボディカラーは、色彩豊かなものばかり。近年のモデルのように、モノトーンな色調へなびくことはない。思わず、同社の姿勢を応援したくなる。

ここにはブルーの空が広がり、オレンジ色の太陽が輝く。とはいえ、大地を象徴するグレーのフィアットも好ましいが。

どのカラーでも、新しい600eは個性的でスタイリッシュ。フィアット500eよりボディはひと回り大きく、クロスオーバー風に仕立てられている。

デザインは、500eから影響を受けたことを隠さない。ボディ面は柔らかくカーブし、半分まぶたを閉じたようなヘッドライトが、丸くくり抜かれている。内燃エンジン版のフィアット500X、より均整が取れているように思う。

車内空間や快適性が重視され、500eよりシルエットは直立気味。プラットフォームは、ジープ・アベンジャーと同じe-CMP2となる。

小さなボディに156ps オシャレなインテリア

丸いボディは、予想以上にコンパクト。全長が4171mm、全幅は1781mm、全高は1523mmで、フォルクスワーゲンTクロスと同等といえる。入り組んだ市街地でも駐車しやすく、長距離ドライブも苦にならないサイズだ。

先にリリースされるのは、51kWhの駆動用バッテリーを積むバッテリーEV版。2024年には、ハイブリッド版も提供が始まるという。しばらくは、現行型の500Xと併売されるそうだ。

フィアット600e ラ・プリマ(欧州仕様)
フィアット600e ラ・プリマ(欧州仕様)

駆動用モーターは156psで、前輪を駆動。車重は1520kgと重すぎず、0-100km/h加速を9.0秒でこなし、航続距離は408kmがうたわれる。急速充電能力は、DCで最大100kWまで対応する。不必要に速いバッテリーEVとは異なる。

インテリアはオシャレに仕立てられつつ、快適性や利便性にも配慮されている。ダッシュボードのベースはアベンジャーと共有するが、ちゃんと差別化されている。

塗装された化粧パネルが与えられ、安っぽい印象は皆無。頻繁に手で触れる部分の素材も、質感に優れる。試乗車はラ・プリマと呼ばれる上級グレードで、ブルーの差し色が入ったアイボリー・レザーが素敵だった。

足元には硬質なプラスティック製部品も使われているが、モダンでフレッシュ。人間工学的にも配慮されている。

インフォテインメント用の10.25インチ・タッチモニターは鮮明に描画され、アップル・カープレイとアンドロイド・オートへ対応し、システムも扱いやすい。モニターの下には、エアコン用の実際に押せるハードスイッチが並ぶ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ヴィッキー・パロット

    Vicky Parrott

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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