ウエット最速マシン選手権
公開 : 2014.10.24 23:50
テスト5:ラップタイム
最終テストのみスタビリティ・コントロールをオフにして行った。十分にそれぞれのクルマの特性を知ったあとで、スライドしやすい路面においてどのような身のこなしをするのかが気になったからだ。結果から先に述べると、それぞれが極めて速く走ることができたのだけれど、望外だったのはアビリティに加えて、雨天時においてもエンターテイメント性も兼ね備えているモデルが見つかったということ。
首位は同率でゴルフRと911カレラ4S。911に関しては、ものすごく性能の高いラリーカーのような印象だった。コーナーのターンインでは荷重移動がしやすく、侵入したあともノーズの向きを維持しやすかった。言うまでもなくライン修正も簡単だった。これと似たことがゴルフRでもすることができたのだが、ゴルフRの場合はエンジンが前方に位置するにもかかわらず、ことのほか簡単に修正舵を与えることができるのだ。ひとえにハルデックス製の4WDシステムのおかげとも言えるだろう。RS4にも似た特性があった。
4位にレンジローバー・スポーツが食い込んできたのも素晴らしい。スライドし始めると、制御の介入しない巨大な体躯をコントロールするのは難しかったが、SUVとして堅実な仕事に徹した。
GT-Rのタイヤはブレーキング時に何も手助けをしてくれなかったため二駆のモデルよりも辛うじて上のポジションに留まった。6位のミニは素早くコーナーを走りぬけ、ゲーム感覚で楽しみながら運転することができた。86が最下位になったのは、ドライに特化した設定であるがゆえに、ウエットでは粘ろうとさえもしなかったからだ。まぁ心から楽しませてくれたおかげで、ミニよりも7.5秒、911とゴルフよりも14.85秒も遅いタイムになったことは、われわれとしてはあまり気にならなかった。
結果: 1) ポルシェ911カレラ4S、フォルクスワーゲン・ゴルフR 3) アウディRS4 4) レンジローバー・スポーツ 5) 日産GT-R 6) ミニ・クーパー 7)トヨタ86
結論
いよいよ雨天におけるベストカーを選ぶ時が来た。後輪が暴れまわりスピンするクルマにこそ価値を置く類稀な人々でない限りトヨタ86はベストにはなり得ないことは既に自明だ。これまでのテストでは86は高い評価を得ていたのだけれど、さすがの86も雨の中ではあまり使いものにならないようだ。よって残念ながら最下位。
6位はミニ。FFのクルマの中では、まずまずの仕事をし、4WDの中でも芳しくなかった5位のモデルにあと一歩で追いつきそうな勢いがあった。
続いて同率4位でレンジローバー・スポーツと日産GT-R。まずSUVとして堅実な仕事に徹したという点でレンジローバーが4位のポジションにつき、GT-Rはドライ路面では素晴らしいタイヤであるにもかかわらず、雨の中ではやや頼りないものの、車重とコントロール性能の高さから最終的にレンジローバーのポジションに並んだ。
アウディがレンジローバーを凌ぐことができたのはタイヤの性能によるところが大きい。偏平率が30%のタイヤよりももっと適したものがあるはずだが、2位と僅差で3位となった。
911はこれまで様々なテストで首位になることが多かったため、今回もかなりの期待がされていたが、最後の最後でゴルフに負けてしまったのは駆動輪に対するトルク配分が大きく影響している。どちらも高いレベルの旋回性能を持っていることには変わりないが、やはりウエット路面の限界点近くではフロントにトルクを多く配分するゴルフに軍配が上がった。
ゴルフRは加速、ブレーキングなど様々な状況下で頼れる存在であることから、ウエットコンディションでは理想的なクルマであることが明らかになった。発進、加速、静止、全てにおいて他のクルマの真似できないポジションにある。
(マット・プライヤー)