容姿と中身の好バランス ヒョンデ・アイオニック6へ試乗 韓国製BEVの実力を探る 後編
公開 : 2023.09.23 20:06
空力特性を磨き、少しでも長い航続距離を求めたアイオニック6。印象的な容姿に見合う中身を備えるのか、英国編集部が確かめました。
使い勝手を犠牲にしないスタイリング
バッテリーEVが普及していくなかで、パワートレイン・レイアウトの柔軟性を活かし、従来の枠にとらわれないデザインが可能になっている。積極的に、その可能性を模索する自動車メーカーも存在する。視覚的な多様性が生み出される時代にある。
想像力を掻き立てられない、均質的なモノは淘汰されていくのではないだろうか。同時に、沢山のクルマを販売するというビジネスは、過去にないほど困難な状況にもある。
英国でも、バッテリーEVを冷ややかに受け止めている人は少なくない。まだ充分な市民権を得たともいえない。新車価格は、同等の内燃エンジン・モデルより遥かに高い。退屈なニューモデルを提供するスキは、なくなったといっていいだろう。
そんな難しいことを考えている間に、霧雨だった天気は本降りになった。撮影を終わらせ、移動していた花壇を戻し、カメラマンと車内へ戻る。
それでは、アイオニック6の4ドアサルーンとしての完成度はどうだろう。容姿に釣り合うだけの、印象的な走りを得ているのだろうか。
ボディサイズが小さいとはいえないが、入り組んだイタリアの町でも非常に運転しやすい。ステアリングホイールには適度な重みが伴い、不安なく導いていける。
大きくカーブを描いたルーフラインの先に、大きなリアスポイラーが載っていても、運転席からの視界は良好。疲れを感じさせにくい。クルマとしての使い勝手も、まったく犠牲になっていない。
外界と好対照な空間を生むインテリア
ただし、空気抵抗を理由に採用されたデジタルミラーのメリットは、果たしてどの程度あるのか疑問は残る。カメラ映像がモニターへ映し出されるのだが、実際に確認したいと思った場所と、違う範囲を見ていたということが何度かあった。
ベスパがギリギリで通過していくと、その様子がモニターいっぱいに広がる。技術力を示すことはできるのかもしれないが、鏡を用いた方が市街地では確認しやすいと思う。
駆動用モーターが優雅に生み出すパワーに乗って、街の外れへ向かう。グランド・ホテル・インペリアーレが、今回の目的地だ。途中、かなりきついヘアピンカーブがあり、アイオニック6の11.8mという回転直径では対応しきれなかった。
リラックスして走れる幹線道路を流し、再びタイトなヘアピンを抜け、風光明媚なモルトラージオの街へ。アイオニック6は、スタイリングとダイナミクスが見事にバランスしている。
アルミホイールは適度なサイズで、サイドウォールが充分膨らんでいる。イタリアの古い石畳の路肩で、ガリキズを付ける心配はない。大きすぎないボディは、活発に走る地元のタクシーと問題なくすれ違える。
インテリアは開放的。ワイドな液晶モニターがダッシュボード上で光っているが、デザインは穏やか。落ち着いたモダンな雰囲気が、外界と好対照な空間を生み出している。