理解を超えたスーパーカー ランボルギーニ・ウラカン・ステラート 最後を飾る至高の喜び(1)
公開 : 2023.10.09 19:05
アイデアはウルスの開発時に生まれた
このクルマは、あくまでも市販された量産車だ。グレートブリテン島の西、ウェールズ州スランイドロイス郊外にある、スイートラム・モータースポーツ・コンプレックスから帰還しただけに過ぎない。とはいえ、世紀末感を漂わせていることも否定できない。
ウラカン・ステラートのアイデアは、SUVのランボルギーニ・ウルスの開発時に生まれたという。同社の技術者は、イタリア・ナルドのオフロードコースを疾走する楽しさに魅了された。ラリーカーのようなウラカンを作りたいと、上層部へ進言したらしい。
幸運にも既に、ブガッティで数年間を過ごしたステファン・ヴィンケルマン氏は、サンタアガタの本社へ戻っていた。斬新なアイデアを好む彼はゴーサインを出し、ウラカン・ペルフォルマンテをベースにした開発がスタートした。
その3年後に完成し、予定の生産数、1499台は完売している。英国価格は、23万2820ポンド(約4214万円)だった。
クルマ好きの想いをくすぐるストーリーだが、喜べない事実もある。ウラカン・ステラートは、ランボルギーニが量産する、自然吸気エンジンだけを動力源とする最後のモデルとなるのだ。
傑作ユニットの1つに数えられる、V型10気筒エンジンがジュニア・ランボルギーニへ載るのも、これが最後。強化される排気ガス規制に合わせて、次期モデルにはV型8気筒が積まれる予定にある。
毎日運転しても苦にならない快適性
2023年の初めに、アメリカ・カリフォルニア州でウラカン・ステラートのメディア向け試乗会が開かれた。ランボルギーニが手配した、手入れの行き届いたダートコースと、滑らかなサーキットで。
心から運転を楽しめたが、いくつかの疑問も残った。従来のスーパーカーの概念を破るこのクルマは、現実の世界でどこまで機能するのか。シリアスなオフロードを思い切り駆け回れるだけの、本当のタフさを備えているのか。
それらの答えを求めて、筆者はウェールズ州を巡ることにした。この地域は、世界ラリー選手権(WRC)の舞台にもなってきた場所だ。スノードニア国立公園を貫くワインディングも交えた、オリジナルのコースを組んでみた。
ランボルギーニは、ラリーとの縁は殆どない。それでも、故コリン・マクレー氏なら、ウラカン・ステラートを笑顔で迎え入れたに違いない。彼は派手なクルマが好きで、ムルシエラゴを所有していたこともある。
スタート地点は、グレートブリテン島の中央に位置するウォリックシャー州。フォトグラファーと合流し、西を目指す。待ち合わせしたカフェ、カフェイン&マシンにいた若者から、熱い視線を受けながら。
ウェールズ州までの一般道で、ウラカン・ステラートの素晴らしい乗り心地へ浸る。V10エンジンへ綺麗な空気を送るべく、ルーフへシュノーケルが伸びており、後方視界は非常に悪い。だがそれ以外、毎日運転しても苦にはならないだろう。
この続きは、ランボルギーニ・ウラカン・ステラート 最後を飾る至高の喜び(2)にて。