FIA会長、F1の内部対立を語る モハメド・ビン・スライエム氏にインタビュー 自身の論争、透明性、リバティについて訊く

公開 : 2023.09.25 20:05

F1への新規チーム参入に前向き

最大の論争は、F1グリッドへの新規チーム参入をめぐるものだ。ビン・スライエム氏が会長に就任して以来、アウディがザウバーチーム(現在はアルファ・ロメオとして参戦)を買収することでF1への参入を決めて大きな注目を集めたが、彼はグリッドの拡大を考えている。

FIAは2月、F1と既存チームが支持しない申請プロセスを開始した。彼らは、たとえ2億ドルの参入費用を払わなければならなくなったとしても、F1に「重要な価値」を与えるチームだけを加盟させるべきだと主張している。しかしビン・スライエム氏は、F1を商業的に縛るコンコルド協定が12チームを認めている以上、新規参入組を完全に締め出すことはできないと主張する。

ビン・スライエム氏は既存チームを買収することだけがF1への道だとは考えていない。
ビン・スライエム氏は既存チームを買収することだけがF1への道だとは考えていない。

彼は、1970年代のF1の伝説的人物マリオの息子であるマイケル・アンドレッティ氏が運営する、アンドレッティの参戦(ゼネラルモーターズと提携)を声高に支持している。

「わたし達のルールでは、真剣な(参加希望)チームがあれば、(プロセスを)オープンにしなければなりません。わたし達にはルールがあり、ただノーと言うわけにはいきません。一方、12チームとの契約があるので、そのプロセスに従う必要があります」

「正直なところ、わたしはリバティ・メディアを動揺させるためにここにいるわけではありません。ですが、もし彼らの気分を害していると言うのなら、わたしはFIAのことをいろいろ言っている人たちを列挙することができます」

「わたし達が潜在的なチームに対してノーと言っているところを想像してみてください。わたし達はモータースポーツを維持するためにここにいる。市場シェアには目を向けない、非営利団体なんです。ビッグチームと裁判沙汰になり、わたし達が間違った理由で妨害しているなどと言われるのは避けたい」

「わたし達は関心表明を受け付け、デューデリジェンスを行い、財務面、技術面、そして数年後の自分たちの姿も見据える。米国からチームが来るのはいいことです。『チームを買わなければダメだ』と強制することはできません」

この件に関する決定までのスケジュールは後ろに流れている。FIAとF1の両方が新チームにサインしなければならないのだから、なかなか大変な状況だ。ビン・スライエム氏の現在の選択肢は、新チーム設立希望者の申請を受け入れるか、あるいは手を引くかである。

これは両者間の緊張の表れであるが、あくまで一部に過ぎない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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