優雅で自信に満ちている アストン マーティンDB5 希少なシューティングブレーク(2)  

公開 : 2023.10.08 17:46

1速で引っ張るとあっという間に80km/hへ

ダッシュボードには、DB4から受け継いだ、クロームメッキ・リングの輝くメーターが豪華に並ぶ。中央には時計も。スイッチ類には、各機能がラベリングされている。くまなく美しい。

滑らかに動くパワーウインドウの機構も、アストン マーティン自ら開発したもの。指を挟むのを防ぐため、閉まる直前は上昇スピードが落ちるよう配慮されている。

カンバーランド・グレーのアストン マーティンDB5と、パシフィック・ブルーのアストン マーティンDB5 コンバーチブル、カリフォルニア・セージのアストン マーティンDB5 シューティングブレーク
カンバーランド・グレーのアストン マーティンDB5と、パシフィック・ブルーのアストン マーティンDB5 コンバーチブル、カリフォルニア・セージのアストン マーティンDB5 シューティングブレーク

ガラスは大きく、全方向の視界は良好。安全性を求めた現代のモデルと比べると、ピラーは不安なほど細い。

3台のDB5は、惚れ惚れするようなサウンドを放つ。SUキャブレターを載せるクーペの方が、ウェーバーキャブレターのシューティングブレークより静か。低速域では、王室が乗るリムジンのようにゆったりと進む。

4.2Lへ排気量が増やされたコンバーチブルが、最も意欲的。トルクが太く、シフトダウンの必要性は低い。滑らかな唸りを響かせ、追い越し加速を悠々とこなして見せる。

いずれも、トランスミッションはZF社製の5速マニュアル。シフトレバーは気持ち良く動き、上段3速のレシオがクロスし、操る楽しさを高めている。

クラッチペダルは重すぎない。スムーズな発進には、高めの回転数を意識するのが良いようだ。右足へ力を込めると、金属的なノイズを高めながらノーズが持ち上がる。1速で引っ張ると、あっという間に80km/hへ届く。

フロアヒンジのペダルは、ヒール&トウでのシフトダウンがしやすい。ブレーキはバランスに優れ、期待ほどではないが、強力に効く。

忠実で貪欲なレスポンス 探求心が見事に結実

低速域での重さをカバーするため、ウッドリムのステアリングホイールは大径。速度域が上昇しても安心感が高く、安定して直進する。

高速コーナーでは、ほぼ均等な前後の重量配分で挙動はニュートラル。タイトなカーブでは、ステアリングホイールへ伝わる手応えが増し、ドライバーへ自身を抱かせる。アクセルペダルで、ラインを調整するのに充分なパワーも秘めている。

アストン マーティンDB5(1963〜1965年/英国仕様)
アストン マーティンDB5(1963〜1965年/英国仕様)

チャレンジングな道では、象徴的なスポーツ・グランドツアラーらしく、積極的にパワーを展開したい。リジットアクスルは、乗り心地を担保しつつ、ブレーキやトルクへ合わせて強化されている。

荷重移動を図れば、パワーオンでリアタイヤへトラクションをかけ、路面を効果的に蹴らせられる。レスポンスは忠実で貪欲。ドライバーの努力が、走りとして返ってくる。誰しもが似合うわけではない、男らしいオーラを放つマシンだ。

比較すれば、DB4の方が美しく純粋な成り立ちかもしれない。ホイールベースが伸ばされたDB6は、低いルーフのプロポーションに賛否があるとしても、より洗練された内容にあった。

それでも、スーパーレッジェーラ構造のボディを持つ、デイビッド・ブラウン氏のイニシャルを冠した6気筒モデルで、最高の心象を与えるのはDB5だと思う。英国の誇り高きスポーツカー・ブランドの、1つの代表へ据えるのに相応しい。

最高のオールラウンド・グランドツアラーを構築しようという、往年のアストン マーティンの探求心が見事に結実している。

協力:ニコラス・ミー&カンパニー社

アストン マーティンDB5(1963〜1965年/英国仕様)のスペック

英国価格:4084ポンド(新車時)/100万ポンド(約1億8100万円)前後(現在)
生産数:1059台(合計)
全長:4570mm
全幅:1676mm
全高:1346mm
最高速度:228km/h
0-97km/h加速:8.1秒
燃費:6.0km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1468kg
パワートレイン:直列6気筒3995cc 自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:286ps/5500rpm
最大トルク:38.6kg-m/4500rpm
トランスミッション:5速マニュアル(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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