日産370Z NISMO

公開 : 2014.10.27 23:40  更新 : 2021.03.05 18:51

内側を見ていけば、ボディ補強やブレーキ・システム、パワートレインは先代からのキャリーオーバー。しかしながらスプリングとダンパーのレートは低められている。レイズ製19インチ・ホイールはリアが標準よりも12mmワイドになったのだそうだ。

低速域のノッソリとしたフィールはZのいつものそれ。コントロールは重く(重厚感があるというわけではない)、ボディの上下動は意図的に押さえつけられている。ギアボックスがパンチの効いた仕立てなのも先代同様。ステアリングは密に路面の状況を伝えてくれるものの、筆者の理想とは程遠い。ステアリング・コラムは前後方向に調整不可。足元のスペースは浅すぎるため、ごく一般的な体型ならば困ることはなさそうだけれど、足が長いドライバーならば完璧なドライビング・ポジションは諦めるしかない。

バンピーな九十九折に持ち込めば、即座にホンモノのスポーツカーとは程遠いことに気づく。ホイール・コントロールは不器用そのもの、ポルシェケイマントヨタ86のような繊細さはそこにはなく、衝撃吸収のマナーには味も何もない。凹凸をいなすと言うよりも、凹凸に対して真向勝負を挑んでいるのではないかと思うくらい、頑固にキャビンを突き上げてくる。この速度域では忍耐が必要だ。

一方、空いた道で速度を上げていけば、こここそがNISMOにふさわしい場所なのだとわかる。これまで我慢を強いられていたV6はここぞとばかりに快音を響かせながら高らかに回転を上げていく。

この速度域ではシャシー、ステアリングともに滑らかになり、コーナーの振る舞いも自然だ。意図的にガスペダルを蹴り込めば、破綻する予兆など一切見せずに涼しげにコーナーを駆け抜けてゆく。いままで不快でしかなかった振動もようやく正当化される時がきたのだ、と思った。

少なくともこの時だけは、支払った金額の価値を見出だせる。

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

人気記事