軽く速く小さい世界クラス ホンダ・シビック 同期のルノー5 日仏で生まれた新たな魅力(2)

公開 : 2023.10.14 17:46  更新 : 2023.10.17 11:13

日本車を選ぶには勇気が求められた

「1975年のクルマなので、乗り心地は少々跳ね気味ですが、快適といえます。トランスミッションは、ショートレシオの4速のみ。エンジンを回す必要があり、5速目が欲しいと思わせます」

「それでも、1.2L 4気筒エンジンは活発です。ホンダらしく高回転域まで使えますよ」

ホンダ・シビック 1200(1972〜79年/英国仕様)
ホンダ・シビック 1200(1972〜79年/英国仕様)

MLA 993Pのナンバーで登録され、48年間に重ねた距離は12万kmほど。状態は素晴らしく、まるで過去からワープしてきたかのように真新しく見える。かつて、ホンダ・ディーラーへ飾られていた様子を想像できる。

初代シビックも、すっかり珍しいクルマになってしまった。一般道で撮影していると、通行人が驚いたように見つめてくる。

インテリアは、他にはない個性があり魅力的。グレーのクロスとブラックの合皮で仕立てられたシートが、実用主義的な雰囲気を漂わせる。

ダッシュボードの中央は、ファブロンと呼ばれたフェイクウッド・パネルで飾られている。これ以外にも、オプションでステアリングホイールをフェイク・ウォールナットで仕立てたり、天井にスポットライトを追加することも可能だった。

ボディはベーシックな2ドア。ハッチバックのないシビックは、保守的なモーリス・ミニのオーナーを誘惑したかもしれない。とはいえ、当時の英国人にとって、日本車を選ぶにはそれなりの勇気が求められた。優れた仕上がりだとしても。

市場の空白を埋める役割を果たした2台

シビックは、1979年に2代目へ進化。グローバルモデルとして世代を重ね、現行型は11代目に当たる。2021年には、世界での累計販売が2700万台を超えている。

オリジナルのシビックは、同時期のミニよりひと回り大きいが、軽快に見える。ホンダは5シーターだと主張したが、実際は2+2と呼んだ方が正しいだろう。ルノー5の方が小柄ながら、車内は若干広く、ファミリーカーという表現では適している。

メタリック・ゴールドのルノー5 GTLと、イエローのホンダ・シビック 1200
メタリック・ゴールドのルノー5 GTLと、イエローのホンダ・シビック 1200

5とシビックは、ルノーとホンダにとって重要な役割を果たしただけでなく、英国の自動車産業にも大きな影響を与えた。まだ輸入車へ充分に慣れていなかった人々の心の扉を、徐々に開いていった。

愛国心はあったとしても、自分のニーズへ適したクルマを選ぼうという志向が高まっていった。加えて、1970年代にBMCがミニを放置したという現実も、無視はできない。

「毎日の運転へ他に例のない満足感を与える」とホンダが主張したシビックと、「運転に係るすべての問題を解決できる1台」とルノーが主張した5は、市場へ生まれていた空白を見事に埋める役割を果たしたのだった。

協力:シルバーボール・カフェ、ナイジェル・ハラット氏、ホンダUKヘリテージ

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・ロバーツ

    Andrew Roberts

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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