ゴールは究極のドライバーズカー ポルシェ911 S/Tへ試乗 992型で最軽量の1380kg

公開 : 2023.09.30 19:05

自らの記念日を祝う1963台限定の911が登場 ベースは992型のGT3 ツーリング 入念な軽量化で1380kg 英国編集部が欧州仕様を評価

究極のドライバーズカー 992型で最軽量

ポルシェのGT部門を統率するアンドレアス・プロイニンガー氏は、「史上最高とはいえないかもしれませんが、最も面白い911の1台です」。と主張する。

世界ラリー選手権で活躍し、現在はポルシェのブランド・アンバサダーを務めるヴァルター・ロール氏は、「これまで運転したクルマの中で、最高のストリートリーガル・モデル」。だと表現する。

ポルシェ911 S/T(欧州仕様)
ポルシェ911 S/T(欧州仕様)

近年のポルシェは、991型では崇高なRを、最新の992型でもGT3 RSをラインナップする。つまり911 S/Tは、それら以上の仕上がりだということ。

これは、ポルシェ911の誕生60周年を記念するために設定された、特別なモデル。生産数は、初代のプロトタイプが発表された1963年にちなんで、1963台に限定される。英国には約10%が割り当てられ、価格は23万1600ポンド(約4192万円)なり。

ベースとなったのは、英国編集部でも評価の高いGT3を一般道へ僅かに振った、GT3 ツーリング。プロイニンガーは、「GT部門の製品ですが、サーキット・モデルではありません」。と話す。

ニュルブルクリンクのラップタイムを重視していないことが、それを証明するという。「わたし達は、実際にタイム計測していません」

「究極のドライバーズカーを作りたいと考えました。992型で最軽量に仕上げることが、開発での主要なゴールでした」。と続ける。S/Tは、これまでのGTモデルとはだいぶ異なる。

4.0Lフラット6は525ps 入念な軽量化で1380kg

かくして、ドアパネルとフロントフェンダー、ボンネット、ルーフはカーボンファイバー製。ホイールも軽量なマグネシウム製。リアシートは備わらない。油圧で動作する後輪操舵システムも省かれた。

4.0Lの水平対向6気筒エンジンは、992型の911 GT3 RS譲りで、最高出力は525psを発揮。意欲的な特性を与えるため、6速MTと結ぶクラッチは、軽量な専用品が選ばれている。フライホイールも、軽いシングルマスが採用される。

ポルシェ911 S/T(欧州仕様)
ポルシェ911 S/T(欧州仕様)

リアのアンチロールバーとドロップリンクもカーボン。ブレーキはカーボンセラミック。入念なダイエットを経て、911 S/Tの車重は1380kgに仕上がった。MTのGT3 ツーリングより38kgも軽い。991型の911 R比でも、10kg増に留めている。

ギア比はGT3より8%ショートで、シフトレバーは10mm短い。すべて、鋭いレスポンスへ結びつく。

ダンパーやスプリングなど、サスペンションのハードウェアはGT3 ツーリングと同じもの。タイヤも、同じミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2を履く。だが、アダプティブダンパーのソフトウェアは異なる。

ステアリングは、明らかに重みが増えている。操舵へ一層リニアに反応するが、若干スローになった印象。切り始めの鋭敏な回頭性と引き換えに、安定した手応えと感触が与えられている。

多くを共有するGT3 ツーリングと、大きく特性が異なることへ驚く。発進直後から、タイヤが路面を掴む質感が手のひらへ鮮明に伝わる。ステアリングラックは、ベストの仕上がりだといっていい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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