トヨタ・クラウン・マジェスタ
公開 : 2013.10.27 16:50 更新 : 2021.01.28 17:04
クラウン・マジェスタのフロントグリルオーナメントに“王冠”エンブレムが復活するのは、2世代ぶりという。先々代と先代マジェスタのグリルには楕円のトヨタ・マークがあしらわれていた。 ……ってなことは、よほどのクラウンのカルト信者以外にはどうでもいい話だろうが、新型マジェスタというクルマを知るには、これはけっこう象徴的なことである。この事実についてのトヨタの公式見解は“クラウン・ブランドへの回帰”だそうだが、意地悪にいえば、マジェスタは「もはや専用ボディを与えるほどの存在ではない」ということであり、昨今の時代背景もあって、エンジンもついにV8でなくなった。 昨年に日産シーマが復活したとき、とくにマジェスタ派方面から「ただのフーガ・ロングやんけ!」というツッコミを入れた人も多いだろう。現在のシーマは、海外向けフーガの海外向けに用意されるロングボディをベースに、デザイン的にはフロント周囲の造形をプチ整形しただけである。しかし、その意味でいうと、新型マジェスタのほうがシーマ以上に“ただのクラウン・ロング度”は高くなってしまった。 マジェスタは現行クラウンより75mm長いホイールベース(絶対的なホイールベースは先代と同じ)で、その延長分はすべて後席レッグルームの拡大に充てられている。ホワイトボディのパネルでクラウンと異なるのは、長いリヤドア(とそれに伴うルーフやフロアなどの延長)だけで、伝統の縦ルーバーグリルはすべて樹脂部品だけで表現される(内部のルーバーだけでなく、グリル全体がより垂直に近い角度になったりと、それなりに凝った造形ではあるが)。V8ではなくなったパワートレインも、クラウンにはない3.5ℓV6ベース(レクサスGS450hと共通)のハイブリッドになって“マジェスタ専用”というトリデはかろうじて守った。だが、これもそもそもは先代クラウン・ハイブリッドの改良版であり、意地悪くいうと“新型クラウンが捨てたパワートレイン”でもある。 クラウン・マジェスタはもともと1989年に、クラウンにセルシオ(=レクサスLS)用の4.0ℓV8を積んだことからスタートしたクラウンの最上級モデルが元祖である。クラウンV8は次の世代から専用ボディの“マジェスタ”となり、3世代前まではセルシオと同格、先々代からはレクサス国内展開にあわせて「レクサスのLSに匹敵するトヨタ・ブランドの旗艦」という位置づけで売られた。これまで2世代のフロントオーナメントがトヨタ・マークだったのは、そういう意味もある。セルシオ/レクサスは国際舞台でライバルに負けないクルマであり続けなければならない。その一方で、国内市場でトヨタがもっとも大切にすべき最上の得意客は、歴代クラウンを乗り継ぐユーザーだ。「トヨタにクラウンよりいいクルマがある」という事実を公式に認めるわけにはいかなかった。