シトロエンDS3カブリオ
公開 : 2013.10.27 17:12 更新 : 2021.03.05 21:44
DS3カブリオの重量増はベースのハッチバック比でわずか20kg。車検証で見ると、想像していたとおり、前軸荷重はハッチバックと同じで、後軸側でのみ20kg増えているだけだ。この点もシトロエン技術陣の執念を感じるところで、リヤゲートをアルミ化するなどの努力による。この程度の重量差ではもちろん、体感的な動力性能はまったく変わらない。
走りはお世辞でもなんでもなく、ハッチバックと遜色ない。とくにクローズ時はトップ内の骨組が左右をパネルを剛結するからか、ボディ剛性感、ライントレース性能、グリップ感……のすべてで、初期のDS3スポーツシックをしのぐ。速度によって不足気味だったダンピングは、あらゆる走行シーンでバランスしたものとなった。走行中の余計なボディの動きはうまく抑制されているし、タックインを誘ったときの不安定でトリッキーな挙動も影をひそめた。20kg増えた後軸荷重も、少なくともバランス面では良い方向に作用している……ことも十分に考えられる。
これはアバルトの500と500Cでも見られた傾向だ。ディメンションに余裕のないコンパクトスポーティカーの場合、ほどよく緩んだボディと前後重量配分の変化が、結果的に、走りを適度にマイルドにまとめる緩衝材の役割を果たすことがある。まあ、今回のDS3カブリオでは、トップを閉めたときがいちばん正確に走り、フルオープンにすると、やはり微小なスカットルシェイクや走行ラインのわずかなヨレみたいなものが看取できたから、それ以上にDS3そのものが熟成された効果が大きいと思われるが……。
カブリオのメリットはもうひとつある。それは後席居住性。DS3カブリオは基本パッケージやルーフ形状もハッチバックに準じるもので、ちょっと驚くべきことに、5名という乗車定員もハッチバックそのままである。もともとDS3は小型クーペルック車としては室内空間は広かったのだが、ソフトトップ化によって天井中央部がわずかに高くなり、ハッチバックで最大の弱点だった後席ヘッドルームが拡大している。
DS3カブリオの開放感は本格的なオープンカーと較べるべくはないが、片道16秒の短い開閉時間や120km/hまでトップ操作が可能なこともあって、思い立ったら即座にトップを開閉できる気軽さがある。横から見たらまるでオープンカーには見えないところも、周囲の視線が気になって目立つのが嫌いな日本人気質には好適かも……。というわけで、本物のフルオープンカーや大げさな電動メタルトップよりも、DS3のようなキャンバストップ型を選んだほうが、結果的にはオープンエアを楽しむ頻度が増える人が多いだろう。シトロエンの主張どおりに、実用性や快適性にカブリオ化のネガはほとんどない。まあ、意地悪に観察すれば、走行性能に違いがまったくないとはいわないが、そもそもDS3はクリッピングを積極的にねらう本格スポーツドライブを楽しむタイプではない(失礼!)ので、損得勘定でいえば、カブリオのほうが得られるメリットのほうが多い。
(文・佐野弘宗 写真・花村英典)
シトロエン・DS3カブリオ・スポーツシック
価格 | 311.0万円 |
0-100km/h | 7.4秒 |
最高速度 | 214km/h |
燃費 | 16.9km/ℓ |
CO₂排出量 | 137g/km |
車両重量 | 1210kg |
エンジン形式 | 直4DOHCターボ,1598cc |
エンジン配置 | フロント横置き |
駆動方式 | 前輪駆動 |
最高出力 | 156ps/6000rpm |
最大最大トルク | 24.5kg-m/1400-3500rpm |
馬力荷重比 | 129ps/t |
比出力 | 97.6ps/ℓ |
圧縮比 | 10.5:1 |
変速機 | 6段M/T |
全長 | 3965mm |
全幅 | 1715mm |
全高 | 1460mm |
ホイールベース | 2455mm |
燃料タンク容量 | 50ℓ |
荷室容量 | 230ℓ |
サスペンション | (前)マクファーソン・ストラット |
(後) トーションビーム | |
ブレーキ | (前)φ283mm |
(後)φ249mm | |
タイヤ | 205/45R17 |