ホンダ・フィット・ハイブリッド
公開 : 2014.01.27 18:17 更新 : 2017.05.29 19:09
ホンダ・フィットがフルモデルチェンジを果たし、3代目がデビューを果たした。ひと目見ただけでフィットだとわかるスタイリングはつまり、よく言えば初代から連綿と続いてきた血統の継承だが、違う言い方をすればあまり変わり映えがしない。
実際に「各部の寸法やフロントウィンドウの角度など、基本的な枠組みはほとんどイジることができないほどツメツメのパッケージングなんです」とホンダのエンジニア氏が力説するほどなので、これはこれでひとつの完成形といえるのだろう。先代から室内の広さや使い勝手には定評があったので、とくに変更していない点にも納得がいく。ただ昨今の風潮でフロントの衝突安全に注力した結果、ボンネット位置が若干高くなってフロントガラスとツライチになり、故にボディ全体が分厚くなってしまっている。ボディサイドに走る2本のえぐられたようなキャラクターラインは少し唐突な印象があるが、膨れてしまったシルエットに緊張感を与えるための不可欠な処理なのだろう。またフロントグリル(というよりセンターセクション)と横一線になって一体感を醸し出すデザインが施されたヘッドランプも分厚くなったマスクをシャープに見せる処理だが、こちらはホンダらしい軽快感やスポーティな走りを想像させてくれる優秀なデザインだと思えた。
自動車メーカーがいうところの「フルモデルチェンジ」は「ビッグマイナーチェンジ」の範疇に含まれることが少なくないが、その点3代目フィットは完全なる刷新を受けている。とくにプラットフォームはガソリンタンクをフロントシート下に収めるフィット伝統の「センタータンクレイアウト」を継承しているものの、ハイブリッドシステムを効率よく収めるため完全に新造されているという。フロントのマクファーソン・ストラットとリヤのトーションビーム式足まわりもこのクラスのクルマでは変えようがない形式だが、新型プラットフォームに合わせてコンポーネンツ自体が新しくなっているという。
インテリアは先代に比べて格段に質感がアップしている部分で、立体的な造型のダッシュパネル内に自然なかたちで8インチのモニターがはめこまれるなど、クラスを越えた演出が光っている。また上級グレードではフルオートエアコンの操作パネルが静電式タッチパネルになっており、見た目も操作感も先進的なものになっている。
3代目フィットのラインナップは1.3ℓエンジンを搭載するベーシックな13Gシリーズにはじまり、1.5ℓの15Xシリーズ、そしてもちろんスポーティなRSも用意されている。シリーズのトップグレードは2代目フィットの中盤に投入されたハイブリッドが務めることになる。
バッテリーユニットを効率よく搭載する新プラットフォームや上質なインテリアといった新型フィットの改変部分は、受注の過半数を占めるというハイブリッドを完璧に仕上げるためのギミックに思える。先代のフィット・ハイブリッドはインサイトのシステムを移植するかたちでモデルライフ半ばの追加となったが、今回は最新のシステムを得て3代目デビューとともにラインナップされることになった。そのキモとなるのは形式がニッケル水素からリチウムイオンへと変更されたバッテリーと、ハイブリッド専用装備となるDCT(デュアルクラッチ)を備えた7段自動変速ギヤボックスである。
新型フィットで走りはじめた第一印象は、パワートレインが車格を忘れてしまうほどトルクフルであること。スポーツカーのようにエンジン回転に応じてパワーが弾けるというのではなく、かのメルセデス500Eのようにハナッからクラス違いのエンジンを搭載した場合のような図太いトルク感なのである。その図太さが7段デュアルクラッチのギヤボックスを介してシームレスに高まっていく様は他に比べるものがない。また以前のフィット・ハイブリッドはモーターがガソリンエンジンのアシストをする感覚だったが、今回はシステム的にエンジンとモーターの駆動を切り離すことができるため、発進直後などモーターのみの駆動も可能にできるようになっており、ハイブリッドらしさがよりダイレクトに感じられる点も特筆すべきだろう。
シャシーはハイブリッド仕様のみならず、ベーシックな13Gをドライブした場合でも少し足まわりが硬めで、結果的に重厚な方向に振れていたことが印象的だった。エンジニア氏によれば、フィットに求められるのは何をおいても「燃費性能」なのだそうで、実際にフィット・ハイブリッドの36.4km/ℓというJC08モードの燃費は直接的なライバルたるトヨタ・アクアの公称燃費をジャスト1km/ℓ上回っている。だがフィット・ハイブリッドに1時間ほど試乗してみた印象では、カタログ数値のプロレスに勝つために躍起になったおかげで出てしまったボロのような類は散見されず、むしろ新プラットフォームの落ち着きと新パワートレインとのマッチングの良さが印象に強く残った。
(文・吉田拓生 写真・田中秀宣)
名称 | ホンダ・フィット・ハイブリッド | トヨタ・アクアL | |
価格 | 183.0万円 | 170.0万円 | |
0-100km/h | na | na | |
最高速度 | na | na | |
燃費 | 33.6km/ℓ | 37.0km/ℓ | |
CO₂排出量 | 69.1g/km | 63g/km | |
車両重量 | 1130kg | 1050kg | |
エンジン形式 | 直4DOHC, 1496cc | 直4DOHC, 1496cc | |
エンジン配置 | フロント横置き | フロント横置き | |
駆動方式 | 前輪駆動 | 前輪駆動 | |
エンジン最高出力 | 110ps/6000rpm | 74ps/4800rpm | |
エンジン最大トルク | 13.7kg-m/5000rpm | 11.3kg-m/3600-4400rpm | |
圧縮比 | 13.5:1 | 13.4:1 | |
変速機 | 7段DCT | 電気式無段1 | |
モーター出力/トルク | 29.5ps/16.3kg-m | 61ps/17.2kg-m | |
システム出力/トルク | 137ps/17.3kg-m | 100ps/―kg-m | |
馬力荷重比 | 121ps/t | 95.2ps/t | |
全長 | 3955mm | 3995mm | |
全幅 | 1695mm | 1695mm | |
全高 | 1525mm | 1445mm | |
ホイールベース | 2530mm | 2550mm | |
燃料タンク容量 | 40ℓ | 36ℓ | |
荷室容量 | 314ℓ | 305ℓ | |
サスペンション | (前)マクファーソン・ストラット | マクファーソン・ストラット | |
(後)トーションビーム | トーションビーム | ||
ブレーキ | (前)Vディスク | Vディスク | |
(後)ドラム | ドラム | ||
タイヤ | 185/60R15 | 165/70R14 |