トヨタ・サイ
公開 : 2013.10.27 19:55 更新 : 2017.05.29 18:48
というわけで、SAIと一蓮托生(?)の加藤CEが、満を持して放った次なる一手は、最初のコンセプトとはある意味で正反対の“わかりやすい高級車”への転身である。ご覧のようにボディ前後はとにかく派手で押し出しが強い肉食系。インテリアもメッキとウッド調パネルを大盤振る舞い。やけにプラスチッキーだった従来型の雰囲気とは一転して、ツヤを抑制した各部シボの質感表現もうまい。そしてオーディオパネルには手触りのよいアルミ切削ダイヤルがならび、夜になるとそこかしこがブルーLEDで光っちゃったり……。なんというか、昭和オヤジ世代の琴線をとことんくすぐってやろうという魂胆が明白である。
さて、この宗旨替えは吉と出るのだろうか……はともかく、SAIは走りもビックリするくらいに変わった。さすが「フルチェンジなみ」というだけのことはある。これだけ質量投入感のある手直しでありながら、実際の重量が重くなっていないのも感心する。
従来のSAIは各部の肌ざわりがドライで、それほど静かなクルマではなかった。しかし、今回の試乗車がソフト志向の16インチ車だったからか、新しいSAIはとにかく静かで柔らかく、しっとりと落ち着いて、確実に潤いを増したクルマだった。ロールは小さくないのだが、ゆったりと減衰がきいた動きなので、いい意味で車重が50kgくらい重くなったように錯覚する。ステアリングのロックtoロックが3.0回転というスローな設定なのもいい。シートもド派手で前衛的カラーだったが、座り心地はフカフカ。
新しいSAIは、昨今ではすっかり少なくなった日本伝統の高級車テイストを持つクルマである。今回は別項のクラウン・マジェスタと同日開催の試乗会だったこともあって、SAIを乗り出した瞬間に思いついたのが“小さなマジェスタ”という言葉である。SAIの走りが現在の国際基準でどう評価されるかに疑問がなくはないが、この方面に突っ走ったときのトヨタは、さすがに味のある仕事をするものだ。
(文・佐野弘宗 写真・花村英典)
トヨタ・サイS“Cパッケージ”
価格 | 331.0万円 |
0-100km/h | na |
最高速度 | na |
燃費 | 22.4km/ℓ |
CO₂排出量 | 104g/km |
車両重量 | 1570kg |
エンジン形式 | 直4DOHC, 2362cc |
エンジン配置 | フロント横置き |
駆動方式 | 前輪駆動 |
エンジン最高出力 | 150ps/6000rpm |
エンジン最大トルク | 19.1kg-m/4400rpm |
圧縮比 | 12.5:1 |
変速機 | 電気式無段変速 |
モーター出力/トルク | 143ps/27.5kg-m |
システム出力/トルク | 190ps/na |
馬力荷重比 | 121ps/t |
全長 | 4695mm |
全幅 | 1770mm |
全高 | 1485mm |
ホイールベース | 2700mm |
燃料タンク容量 | 55ℓ |
荷室容量 | 429ℓ |
サスペンション | (前)マクファーソン・ストラット |
(後)ダブルウイッシュボーン | |
ブレーキ | (前) Vディスク |
(後)ドラム | |
タイヤ | 205/60R16 |