メルセデス・ベンツCEO「EVシフトには柔軟性が必要」 電動化、中国ブランド、自動運転を語る

公開 : 2023.09.28 18:05

・メルセデス・ベンツのオラ・ケレニウスCEOに独占インタビュー。
・内燃機関からEVへのシフト、中国ブランドについて見解を語る。
・eフューエル(合成燃料)については消極的な姿勢。

メルセデスのトップに聞く

最近公開されたメルセデス・ベンツのコンセプトCLAクラスは、明らかにテスラモデル3に対抗することを意図した、高い効率性を誇るニューモデルであり、同社の野心的な電動化計画の次章の幕開けでもある。

これは、内燃機関を発明した企業からゼロ・エミッション・メーカーへの進化を目指すメルセデス・ベンツの新たな一歩だ。AUTOCARはメルセデス・ベンツ・カーズのオラ・ケレニウスCEOにインタビューし、ブランドの伝統、中国のライバル、電動化、そして自動運転についての見解を聞いた。

メルセデス・ベンツ・カーズのオラ・ケレニウスCEOとコンセプトCLAクラス
メルセデス・ベンツ・カーズのオラ・ケレニウスCEOとコンセプトCLAクラス

中国ブランドにはどう打ち勝つ?

――メルセデスの電動化に対する意気込みを聞かせてください。

「わたし達が目指しているのはゼロ・エミッション・モビリティであり、その方向性を脱炭素戦略『Ambition 2039』で戦略的に明確化しています。パリ協定の2050年目標より10年早く、サプライヤー、オペレーション、製品、そして使用中の製品といったバリューチェーン全体を脱炭素化したいと考えています。わたし達は、新世代のEVと新技術に数十億ユーロを投資しています」

メルセデス・ベンツ・コンセプトCLAクラス
メルセデス・ベンツ・コンセプトCLAクラス

「その道のりはマラソンであり、短距離走ではありません。(次から次へと)短距離を走っているように感じますが、距離はマラソンです。どの市場でも、どのタイミングでも常に直線的な発展を期待することはできません。ですから、次の10年に向けて、わたし達も提供している電動化されたハイテクICE車に関して、戦術的な柔軟性が必要なのです。当社の組立工場は、この2つの間でフレキシブルに対応できるという非常に良い立場にあります。戦略的な明確さと技術的な柔軟性という点で、間違いはありません」

――中国のEVの新たなライバルを心配していますか?

「これほど大きな変革、つまり技術的・産業的な変革の中で、新規参入があるのは当然です。それは西洋、東洋、欧州、どこからの参入であろうと予想されることです。1980年代から90年代にかけての日本企業、そして韓国企業など、ここ数十年の間に欧米市場には多くの新規参入者がありました。中国企業が海外に出たがるのも自然なことでしょう」

――では、ここ欧州で、中国の競合他社や他のライバルにどのように打ち勝つのでしょうか?

「コンセプトCLAのパーツの総和を見ても、これに勝てるクルマを見つけるのは難しい。ゴットリープ・ダイムラーとカール・ベンツ以来、新境地を開拓し技術の限界を押し広げるという探求心は、130年以上前と同様、今日でもわたし達のDNAに非常によく根付いています。同時に、わたしはメルセデスについて、ハイテク分野と他のすべての価値観の完璧な融合であると常に考えています」

「安全性に関してメルセデスほど長く深い実績を持つ企業はありません。保険会社や安全評価機関に行けば、いくつもの星を取ることができます。わたし達はいつも、メルセデスの星は1つ(スリーポインテッドスター)で十分だと言っています。わたし達は、誰もやらないようなさまざまなテストを行っています。当社のクルマを衝突させ、競合車を衝突させ、何がうまくいくのか、何がうまくいかないのかを感覚的に理解しています」

「そして、クルマの乗り心地や走りも重要です。ある人がエアベント(エアコンの吹き出し口)を見る場所で、わたし達はジュエリーを見るのです。デザイナーは何時間もかけて、美的感覚にぴったり合うように仕上げます。メルセデス・ベンツをメルセデス・ベンツたらしめているものが、すべてここにある。EVドライブトレインやインフォテインメントだけではないのです」

――大衆向けのeフューエル(合成燃料)についてはどうお考えですか?

「わたしは、新車の乗用車の側でスケールアップするのはバッテリーEVだと考えています。炭素削減燃料については、ゼロ・カーボン燃料に至るまで、航空や海運などの分野で必要になるでしょう。100%ゼロ・エミッション車が販売されるようになるまでの道のりには、まだ15億台から20億台の(既存のICE)自動車が存在します。これらのクルマの負担を減らしたいのであれば、炭素削減燃料は理にかなっています。しかし、風車から車輪へ、EVの効率はeフューエルより70%高いのです」

「さらに、真の循環型燃料にするために必要な、大気からCO2を除去する産業規模の取り組みを、わたしはまだ見たことがありません。燃料を本当に循環させるためには、大気中から何百万トンものCO2を取り除く必要があります。それは容易なことではなく、安価なものでもありません。産業化されるのは2030年代に入ってからだと思います。一方、BEVは現在進行形です」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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