フォルクスワーゲン・ゴルフGTI
公開 : 2013.09.27 20:45 更新 : 2017.05.29 18:58
ちなみに、制御範囲が拡大されたというESPも、ゴルフGTIらしい枠組みで制御が構築されている。コーナー進入時において強めの制動にオーバーラップさせて操舵を入れたとき、負荷の高まったフロントが以前のように音を上げて真っ直ぐ突進しようとする動きは抑え込んでくれる。しかし、そこから制動を徐々に抜くことでヨーを強めようとしても、それは許してくれない。つまり、前後荷重移動による影響を排除して、舵角どおりにハナが入ることを良しとした設定であって、そういう状況で、ときに弱オーバー姿勢まで採らんとするタイプRやRSのような鮮烈な機動性は持たされていないのだ。また、ブレーキ制御による疑似LSDは、内輪を空転させない効果は享受できるが、それ以上の、つまり機械式LSDのようにパワーオンでフロントを力強く内側に引き込むような挙動までは作ってくれない。そのとき電子制御スロットルが絞られて、プッシュアンダーは出ないが旋回加速はぬるいという状態に留まる。本国ではオプションリストに入っている電子制御のメカLSDならば、それ以上の旋回挙動が作れるのだろうが。
先代よりも9psの上積みとなった220psエンジンは、概ね満足すべき出力特性と洗練性を担保する。1.4ℓのようにレブリミットの半分のところでブーストを使い切ってしまったようなフン詰まり感を見せることはなく、また排気量の余裕ゆえかギヤ固定の低回転でブースト遅れを露呈することもなく、高速高負荷でストレスは発生しないエンジンだ。ただし5000rpm以上では過給が先細りになるのも確かで、全域でパワフルとまでは言い難い。3〜4速の間がエンジン回転にして1500rpmも飛んでいる6段DSGのギヤリング設定がこれに加わり、印象としては200km/hを1割ほど越すあたりまでの加速力に割り切った感触を受けるパワートレインである。言い添えれば、神経に触る騒音振動は消されているが、高負荷加速中に床下から排気系起因と思しき中低域の騒音があって、少なくとも官能的とは言い難いのも確か。
電制ダンパーは、この手のデバイスが必然的に内包する陥穽からは逃れられていない。減衰力を可変させて、それを乗り手に明瞭にアピールするにはバネ定数を低めに設定する必要がある。そのために機動性モードでは、一見アシが締まっているように思えながらもロール量はどんどん増えていくし、微小域のストローク制御もしゃっきりしない、要はダンパー依存性が高いアシとなっている。また柔和モードではタイヤ(試乗車はオプションの18インチを装着しており、銘柄はコンチネンタル・スポーツコンタクト2だった)のCFの立ち上がりに対してアシが動きすぎる。帯に短し襷に長しなのだ。乗り心地は、角は丸められているが、バネ下が暴れ気味にドタつくきらいあり。18インチのせいだろうか。
(文・沢村慎太郎 写真・花村英典)
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI
価格 | 369.0万円 |
0-100km/h | 6.5秒 |
最高速度 | 244km/h |
燃費 | 15.6km/ℓ |
CO₂排出量 | 148g/km |
車両重量 | 1390kg |
エンジン形式 | 直4DOHCターボ, 1984cc |
エンジン配置 | フロント横置き |
駆動方式 | 前輪駆動 |
最高出力 | 220ps/4500-6200rpm |
最大最大トルク | 35.7kg-m/1500-4400rpm |
馬力荷重比 | 158ps/t |
比出力 | 111ps/ℓ |
圧縮比 | 9.6:1 |
変速機 | 6段DCT |
全長 | 4275mm |
全幅 | 1800mm |
全高 | 1450mm |
ホイールベース | 2635mm |
燃料タンク容量 | 50ℓ |
荷室容量 | 380-1270ℓ |
サスペンション | (前)マクファーソン・ストラット |
(後)4リンク | |
ブレーキ | (前)φ312mmVディスク |
(後)φ300mmVディスク |