オープンでも美貌は不変 フェラーリ・ローマ・スパイダーへ試乗 輝かしいスポーツ・グランドツアラー(1)
公開 : 2023.10.01 19:05
フェラーリの最新2+2にスパイダーが登場 ポルトフィーノと交代しソフトトップへ 印象的なほど心地良い走り 英国編集部がスペインで評価
8層構造のソフトトップを得たローマ
新しいフェラーリのクーペが発表されたら、必然的にコンバーチブルが控えていることも想像できる。しかし、V8エンジンをフロントに搭載した2+2のフェラーリ・ローマには、2020年の発売以降、目立った動きがなかった。
それには事情があった。ローマは、エレガント志向で2+2のポルトフィーノ M以上の、積極的な走りを求めるドライバーへ向けたモデルとして、据えられていたためだ。
しかし今回、3年の時を経てスパイダーが追加された。ポルトフィーノの生産が終了するタイミングへ、合わせたのだと考えられる。
このローマ・スパイダーは、重いリトラクタブル・ハードトップではなく、軽いカンバス製ソフトトップを背負う。メルセデスAMG SLが、方向転換を図ったように。
現代のカンバス素材は耐久性が大幅に向上し、かつてのように雨漏りする心配もない。ローマでは8層構造が採用され、リアウインドウは、ビニールではなくガラス製。フレームも頑丈で、60km/h以下なら走行中でも13.5秒で折り畳める。
表面のカラーも、ブラックやアイボリーだけではない。織り目が美しい、6色から選択できる。それでも、フェラーリの技術者によれば、カンバス素材にはまだ課題が残るらしい。折り畳むとクセが付いてしまうことが、その1つだという。
2+2オープンでトップクラスの平穏さ
カブリオレへのコンバージョンでは、シャシーへの入念な補強が欠かせない。サイドシルやソフトトップのマウントポイント、リアアクスルの周辺やAピラーなどへ改良が加えられ、ローマ・スパイダーはクーペから84kg重くなった。
車重は、オプションの軽量化パッケージを組んで1556kg。最新のカンバス素材が軽量だといっても、ポルトフィーノ Mより11kg増えている。
他方、コンパクトに折り畳まれるソフトトップには、スタイリング上のメリットもある。クーペの優雅さは多少犠牲になったように感じるが、息を呑むような美貌は変わらない。
テール周りは全体的に再デザインされつつ、クーペの印象を上手に受け継いでいる。クローズ状態では、滑らかなルーフラインが姿を表す。
走行時の洗練性は、オープンでもクローズでも大きくは違わない。知的に設計されたウインドディフレクターの効力で、サイドウインドウを下げても車内が乱気流に悩まされることはない。高速走行時の平穏さでは、2+2のコンバーチブルでトップクラスだろう。
ソフトトップを開け放てば、エンジンやエグゾーストのサウンドを直接鑑賞できる。ただし、ローマに搭載されるV8エンジンが奏でる音は、フェラーリとしては魅力が薄い。クーペと同様に、ドライビング体験で最も印象が残らない部分かもしれない。