直5ターボの快速ワゴン アウディ200 アバント・クワトロ・ターボ ボルボ850 T-5R エステート (1)

公開 : 2023.10.15 17:45

強烈なイメージを残した850 エステート

惜しくも、1994年シーズンは限定的な活躍で終わったものの、1995年1月に今回ご紹介する850 T-5Rが発表される。鮮やかなクリーム・イエローに塗られ、派手なグラフィックをまとうレーシングカーと並ぶ姿は、大きな話題を集めた。

レースでの勝利は叶わなくても、ディーラーでの反響は小さくなかった。1995年シーズンのワークスマシンはサルーンへ変更されたが、「この選択はパブリシティの新たな記録を生んだ」とボルボが認めるほど、850のイメージは引き上げられた。

ボルボ850 T-5R(1995〜1996年/英国仕様)
ボルボ850 T-5R(1995〜1996年/英国仕様)

ちなみに、エステートからサルーンへバトンタッチした理由は、1994年シーズンの戦果が最高5位へ留まったことが原因ではない。BTCCが設けた、空力とルーフラインの新しい規制が理由だった。

ステーションワゴンのレーシングカーがサーキットを攻める姿は、強烈なイメージを残した。BTCCの2014年シーズンへ、ホンダシビック・ツアラーを投入しているが、多くのファンは850 エステートの記憶を蘇らせたに違いない。

かくして、850 T-5Rはボルボ歴代最速の座に君臨した。ただし、1994年にアウディポルシェと手を組んだRS2を発売しており、当時最速のステーションワゴンとまでは呼べなかった。高精度なRS2に対して、そこまでシリアスな内容ではなかった。

Urクワトロ由来のドライブトレイン

その約10年前に発売されたのが、200 アバント・クワトロ・ターボ。トランスミッションや四輪駆動システムだけでなく、2.1L直列5気筒ターボエンジンもラリーで活躍した
Urクワトロ由来という、優れた血統の持ち主といえた。

長大で優雅なボディのステーションワゴンは、ラリーコースを下見するレッキカーとしても有能だっただろう。サポート車両として広い荷室へスペアパーツや工具を積み、実際にアウディのラリーマシンをアシストしてもいる。

アウディ200 アバント・クワトロ・ターボ(1985〜1991年/英国仕様)
アウディ200 アバント・クワトロ・ターボ(1985〜1991年/英国仕様)

Urクワトロは、過激なグループB時代に作られたスポーツ・クワトロと直系関係にある。そのシャシーをベースに、200 アバント・クワトロではホイールベースが約150mm延長されている。リアのオーバーハングが長く、シルエットはかなり特徴的といえる。

テールゲートは非常に大きく、グラスエリアを二分するように大きなスポイラーが載っている。誇らしく貼られたquattroのロゴは熱線入りで、冬期の走行中でも雪に隠されることはなかった。

1985年のプレスリリースで、アウディは「高性能と実用性を兼ね備え、四輪駆動だけが叶えるあらゆる条件下での秀でた安全性」という、特別な組み合わせだと主張した。確かに安全性では、当時のモデルとは一線を画す。

意欲的な加速力を、四輪駆動がしっかり支えている。右足へ力を込めると即座に反応しつつ、カーブでの安定性は驚くほど高い。

この続きは、アウディ200 アバント・クワトロ・ターボ ボルボ850 T-5R エステート (2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジャック・フィリップス

    Jack Phillips

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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