マツダが、このタイミングで「ロードスター」を大幅改良する理由

公開 : 2023.10.05 11:41

初のMRCC搭載 なぜできた?

さらに、ND主査の齋藤茂樹氏をはじめとするND開発陣に「もっと魅力的なロードスターを造り、より多くの人にしあわせを届けたい」という熱い思いがある。

NA登場時、マツダが掲げたロードスターの商品価値とは「だれもが、しあわせになる。」である。

新採用されたMRCC(マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール)。作動状況は、コクピット内の3眼メーターのうち、左の円に表示される。
新採用されたMRCC(マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール)。作動状況は、コクピット内の3眼メーターのうち、左の円に表示される。    マツダ

齋藤主査は、環境対策面や安全対策面、走りのレベルアップ、エクステリアやインテリアのクオリティアップなど「企画の時点では最高の製品を目指したが、次の日には(もっと開発を)やりたくなる。エンドレスな気持ち」と表現するほど、NDはまだまだ改良の余地があると指摘する。

その上で、今回の改良ポイントは、大きく3つある。

1つめは、時代が求める先進安全技術やコネクテッド技術の進化。具体的には、ロードスター初となるMRCC(マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール)の搭載だ。

従来、MRCC用のミリ波センサーは車体中央への配置が必須だったが、デザイン要件や衝突安全要件から採用することが難しかった。それが今回、電気電子プラットフォームを刷新したことで、ミリ波レーダーをフロントグリル左側に装着することが可能となった。

また、後退時左右接近物検知機能(SBS-RC)を採用。そのほか、マツダコネクトを進化させ、横長8.8インチ・センターディスプレイを採用した。

FRらしさに磨き 具体的には?

デザインは前後ランプ類のLED化、16インチ/17インチホイールの新デザイン、ボディカラーに「エアログレーメタリック」を追加。インテリアでもセンターコンソール部分をシート等と同じ様な表皮を採用して車内の上質感を際立たせた。

走りについては、新開発のアシンメトリックLSDを採用し、電動パワーステアリングの緻密化により自然でスッキリとしたフィードバックを実現した。

改良新型ロードスターSレザーパッケージ「Vセレクション」(355万3000円~366万8500円/ジェットブラックマイカ/内装スポーツタン・ナッパレザー/ベージュトップ)
改良新型ロードスターSレザーパッケージ「Vセレクション」(355万3000円~366万8500円/ジェットブラックマイカ/内装スポーツタン・ナッパレザー/ベージュトップ)    マツダ

自身も990Sオーナーである齋藤主査は「減速時にリアの接地感が増し、ステアリングでさらに切り込んでいく、いかにもFRらしい走りに仕上がった」と大幅改良モデルの走り味を解説した。

価格は昨今の素材や輸送費の高騰などを受けて若干の値上げとなった。ライバル車の価格動向を踏まえてグレード毎に値上げの幅は違う。

最後に、これから先のロードスターについてだが、齋藤主査は「正直なところ、現時点では何も決まっていない」という。

環境対応としての世の中の電動化の流れを受けて「その方向に」とした上で、どのようなプラットフォームにするかなど、社内での検討がはじまったばかりだと説明した。

マツダでは電動化戦略ついて、現在を「フェーズ1」とし、「フェーズ2」(2025~2027年:電動化へのトランジット)、そして「フェーズ3」(2028~2030年:バッテリーEV本格導入)と設定している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?

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