心から欲しい1台は? マセラティ・グレカーレ レンジローバー・ヴェラール ハイブリッドSUV比較試乗(1)
公開 : 2023.10.14 20:25
マイルドHVを積むイタリアの新星、グレカーレ 一新したプラグインHVのレンジ・ヴェラール 心から欲しいと思える1台は? 英国編集部が比較試乗
プラグインとマイルド ハイブリッド高級SUV
自動車産業の新たな巨大勢力、ステランティス・グループが誕生してから3年が経とうとしている。柔軟に拡大を続けるこのグループへ、次に飲み込まれるのは英国のジャガー・ランドローバーではないかという憶測もあった。
実際は2008年以降、インドのタタ・グループの傘下にあり、噂に過ぎなかった。もしそれが実現していたら、今回比較したマセラティ・グレカーレ・モデナとランドローバー・レンジローバー・ヴェラール P400eは、兄弟モデルになっていたかもしれない。
この2台は、ハイブリッド・パワートレインを搭載する競合クラスの高級SUVだが、内容は大きく異なる。ブランドによって、別々の解釈がなされている。
数年前までは、大きなSUVにとってディーゼル・ターボエンジンは不可欠なものといえた。しかし、最近ではハイブリッドがそれに取って代わっている。
それでは、知的に制御されるマイルド・ハイブリッドを積むマセラティ・グレカーレと、有能なプラグイン・ハイブリッドのレンジローバー・ヴェラール、どちらが心から欲しいと思える印象を与えるだろうか。今回は、そこへ焦点を向けてみたい。
まずは、マセラティが投入したグレカーレについて、簡単に確認していこう。レンジローバー・ヴェラールと比較しながら。
ランドローバーだけでなく、メルセデス・ベンツやポルシェのSUVを検討する人の視野にも入るであろう、イタリアの新星だ。2023年の厳しい高級車市場を、戦える実力は備わっている。
感情的に満たされるグレカーレ
ボディサイズは、全高を除いてグレカーレの方が少し大きい。曲線的なボディラインと、クラシカルな処理が相乗し、スタイリングから受ける魅力は強いように思う。
ディティールの処理にも目を奪われる。塗装の色艶にも高級感が漂い、イタリア流のエレガントさとセンスが光る。2台を並べてしまうと、レンジローバー・ヴェラールは若干淡白に見えてしまう。
インテリアもリッチでラグジュアリー。ひと回り広い車内を、豊潤に仕立てている。センターコンソールを、光沢のあるカーボンファイバー製トリムが飾る。ダッシュボードはブラック・レザーで覆われ、コントラストカラーのステッチが施される。
アルミニウム製のシフトパドルとペダルは、対象的に明るい。ドアを開けば、思わず声を漏らしてしまうほど美しい。
とはいえ、レンジローバー・ヴェラールの車内も素晴らしい。ウエストラインが高く、運転席へ腰を下ろすと適度な包まれ感がある。シートの座り心地は良く、見た目も上質。ダッシュボード上のデジタル技術も、より直感的に扱える。
高級感がありつつ適度に締まりがあり、厳格で上品。だが、感情的に満たされるのはグレカーレの方だろう。
そんなレンジローバー・ヴェラールには、別の強みがある。英国価格が1000ポンド(約18万円)程お手頃なうえに、パワートレインには大きなアドバンテージがある。