「輸出台数は最盛期の7~8割減です…」 ロシアで人気の日本製中古車 輸出禁止が強化された影響は #ニュースその後
公開 : 2023.10.22 18:00 更新 : 2023.10.22 19:26
・ロシア向け中古車輸出に厳しい制限
・新ルールを詳細解説
・輸出台数の変化を調査
2023年8月9日から新ルール施行
ロシアに向けた日本からの中古車輸出に厳しい制限が課せられて1か月半が経過した。
8月9日に日本政府が欧米の規制に追従する形で1.9L以上のガソリン車、すべてのハイブリッド車、EV車の輸出を禁じたのである。
今回の措置により輸出可能な車種が限定され8月の輸出台数(速報値)は7月に比べると約2万台の大幅減少となっている。
また10月19日に発表された財務省貿易統計(速報値)では、ついに1万台を切って9395台にまで減少してしまった。過去10年でもっとも多かった2023年7月の3割以下である。
ロシア向け中古車輸出台数
2023年7月:3万2116台(前年同月比84.9%増)
2023年8月:1万2062台(前年同月比42.5%減)
2023年9月:9396台(前年同月比51.8%減) ※10月19日発表「財務省貿易統計速報値」より。
AUTOCAR JAPANでは昨年春以降、ロシア向け中古車輸出についての記事を公開してきた。
改めてこれまでの経緯と今回の大幅減少となった経緯についてお伝えしておきたい。
多大な影響を与え、与えられ
2022年2月に始まったロシア軍によるウクライナ侵攻によって、ロシアに対して西側諸国の多くが数々の経済制裁をおこなってきた。
自動車関連では2月終わりから3月上旬にかけトヨタ/日産/メルセデス・ベンツ/フォード/ダイムラーなど、日欧米の自動車メーカー各社が相次いでロシアにおける事業停止を発表。
ロシア国内工場での生産や販売を終了し、完成車(新車)や部品の輸出を禁じ、ロシア国内にある各社の新車ディーラーも閉鎖された。
ロシア周辺国でのワイヤーハーネスに代表される部品の生産も一時期は停止を余儀なくされた。日本メーカーの国内生産にまで納期の大幅遅れなど多大な影響を与えてきたことは記憶に新しいだろう。
日本や欧米の新車生産や輸入ができないのはもちろん、最新の電装部品も入手できない状態となった。
ロシア国内の自動車メーカーの中には経済制裁とは無縁の周辺国から入手できる部品を使用して「新車」の製造も試みた。
しかし、そのスペックは酷いもの。エアバッグやABSもない安全性の低い車両を再生産してきたわけだが、いくら何でもそんな旧車スペックの「新車」が人気となるはずもなかった。
ロシア 日本の中古車が大人気
日本からロシアへ輸出される中古車に関しては2022年3月中旬頃、一時期輸出停止となり、日本の港で船積みを待つ大量の中古車の姿がニュースでもたびたび報道された。
しかし、ロシアの人々にとってクルマは生活必需品であり、特に日本車は信頼性や優れた整備性の部分で非常に人気がある。
その後、輸出停止は短期間で終了し3月の終わり頃から贅沢品とみなされる600万円以上の高級車以外は輸出が再開された。
のちに普通トラックの輸出を禁止するなど規制は強化されたが、乗用車の方は月を追うごとに飛躍的に増えていった。
2022年10〜11月は「部分動員令」を避けるべく、港湾労働者が国外脱出した影響で日本からの中古車がロシアの港で滞留する状況となった。
その時期は輸出台数の伸びが鈍化したものの、結局2022年全体では過去10年間で最高となる20万4672台が輸出されている。(20万台の中には輸出台数にカウントされない20万円以下の安価な車両は含まれていない。実際はもっと多くの日本車が入っていると考えられる)
台数が20万台超となったことも驚きだが、1台当たりの単価も2021年までは60万円台だったのに対し、2022年はなんと120万円へ187%増とほぼ2倍の価格に上がっている。
日本製の新車が入手できない分、高年式の中古車がロシアへ大量に持ち込まれたことの結果だと考えられる。
ところでなぜ、このタイミングで輸出中古車への制限が強化されたのだろうか。
冒頭でも述べたが8月9日施行の新ルールは今年7月に外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく輸出貿易管理令の改正がおこなわれたことに関わっている。
欧米と足並みを揃える形で対ロシアへの輸出禁止措置を拡大。「鉄鋼」「輸送用の機械およびその部分品」など合わせて758品目が輸出禁止措置の対象品目として追加されたのである。