トヨタが、「クラウン専門店」をこのタイミングで開業する背景

公開 : 2023.10.07 15:15  更新 : 2023.11.01 00:33

きっかけは、販売店の「全モデル併売」

では、なぜこうしたクラウン専門店が誕生したのか。

その背景には様々な要因がある。

全車種併売を取り入れて3年目。トヨタ販売各社は「独自性を持つ店舗づくり」を目指している。その中で、16代目クラウン・シリーズが本格スタートした。写真は「THE CROWN 横浜都筑」。
全車種併売を取り入れて3年目。トヨタ販売各社は「独自性を持つ店舗づくり」を目指している。その中で、16代目クラウン・シリーズが本格スタートした。写真は「THE CROWN 横浜都筑」。    トヨタ

最大の理由は、トヨタが2020年に国内市場で新たに取り入れた「全販売店全車種併売化」というビジネスモデルへの転換の影響だ。

それ以前は、トヨタ店、ネッツ店、トヨペット店、トヨタカローラ店という4つの販売チャネルをトヨタは国内で構築し、一部車種をのぞいてそれぞれの販売チャネルが違う車種を扱う方式を採用していた。

それが、トヨタの“どの販売チャネルでも”トヨタのフルラインナップからクルマを選べる、というシステムに大きく変わった。

これを受けて、地域によっては、地場のトヨタ販売各社の経営判断によってトヨタ販売チャネルの“統合”が進んでいるところだ。

こうした状況の中で、トヨタ販売各社としては「独自性を持つ店舗づくりは必須」という考えを持つようになった。

そこにトヨタの「16代目クラウン4車系」という製品戦略が出てきて、それにあわせた“クラウン専門店”という提案がトヨタからトヨタ販売各社にあった、という流れだ。

ただし、全国各地域では、トヨタ販売各チャネルでの資本を含めた事業の関係性や、顧客ニーズなどの市場環境は違う。そのため、トヨタ販売会社それぞれのクラウン専門店に対する経営方針も変わってくる。

20代が倍増? 変化するユーザー層

今回視察した「THE CROWN 横浜都筑」の場合、この敷地は2023年6月まで「ウエインズトヨタ神奈川・港北ニュータウン店(旧横浜トヨペット・港北ニュータウン店」だった。

ウエインズトヨタ神奈川は、神奈川県内のトヨタ販売会社のひとつであるウエインズグループ傘下にあり、2023年1月に横浜トヨペット、トヨタカローラ神奈川、ネッツトヨタ神奈川が統合したもの。

「THE CROWN 横浜都筑」の立地は、神奈川県の港北ニュータウン。
「THE CROWN 横浜都筑」の立地は、神奈川県の港北ニュータウン。    トヨタ

「全販売店全車種併売化」以前、クラウンはトヨタ店での専売であったため、ウエインズグループとしては、それまで手がけてこなかったクラウンによって、新たな顧客層獲得を目指すためにも、クラウン専門店「THE CROWN」を全国に先駆けて展開するという事業戦略に出たと言える。
 
トヨタによると、16代目クラウン「クロスオーバー」の販売は好調で、国内市場においてクラウン購買層に大きな変化が出てきた。

15代目クラウンと比較すると、20代顧客が2.58倍、また40歳未満が2.04倍と大きく伸びている。

16代目クラウンも国産高級車という製品価値は歴代クラウンと変わらないものの、クラウンというブランド自体が大きく変わってきていることが実証された数字である。

クラウン専門店「THE CROWN」の飛躍に期待したい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事