スズキ・ワゴンR
公開 : 2013.10.28 19:05 更新 : 2017.05.29 18:41
明確な敵同士が狭い土俵で向き合っていると、こうなってしまうんだな。スズキとダイハツの仁義なき闘いは今にはじまったことではないが、最近さらにエスカレートしている気がする。この両社のハイテンションは、ホンダという第3勢力、さらには三菱・日産連合という第4勢力が出てきたことも無関係ではないかもしれない。「やられたらやり返す……のは当然として、モタモタしてたらほかにもやられるかも。そうなったら致命的。だから1分1秒も惜しい!」みたいな。
というわけで、ワゴンRである。現行型デビューは昨2012年秋。大胆な軽量設計、電気バチバチのエネチャージや最も高速から止めるアイドルストップなどで、当時のダイハツ・ムーヴ27.0km/ℓに対して28.8km/ℓ(ともにJC08モードのシリーズ最良燃費値、以下同)を叩き出して「軽ハイト最良燃費」の座を奪取した。しかもけっこう圧倒的な差をつけて。
ところが同年12月、ムーヴがマイナーチェンジで29.0km/ℓ。ワゴンRには1.8km/ℓものマージンがあったはずなのに、天下はわずか3カ月。しかも、敵はダイハツだけではなかった。三菱・日産連合のeKワゴン/デイズが今年6月に29.2km/ℓ。ムーヴの天下は約半年。そりゃあ、スズキもここまでコケにされたら(?)黙っていない。ワゴンR発売から1年も経たないのに、燃費大幅アップ&低速衝突防止オートブレーキ装備の大手術を敢行した(←今ここ)。
それにしても軽自動車……とくにスズキとダイハツの開発スピードはすさまじい。今回あらためて時系列にまとめて分かったが、彼らは半年未満のスパンでパンチを出し合っているわけだ。しかも、それはあくまでワゴンRとムーヴだけの話で、ほかのモデルも加えたら、ほぼ1カ月ごとの撃ち合いである。
さて、繰り返しになるが、今回のワゴンRの改良点はふたつだ。ひとつめが燃費。ついに大台30.0km/ℓに到達。これでムーヴとeKワゴン/デイズをまとめて打ち負かして、軽ハイト低燃費No.1タイトル奪還。まあ、昨年秋に最新低燃費技術をフル投入しているだけに、今回はさすがに明確な新機軸はない。ただ、ナロー型カムチェーンによるフリクションロスの低減や軽量化されたCVTデフケースなどが、ワゴンRとしては新しい(技術自体はスペーシアで投入済)。あとはエンジンとCVTの制御をより攻めて、エンジンアンダーカバー追加で空力改善。タイヤに変更なし。それにしても、まだこれだけの改善……というか、燃費をひねり出す余地があったとは……。