スズキ・ワゴンR
公開 : 2013.10.28 19:05 更新 : 2017.05.29 18:41
もうひとつ改良点が、最近話題の衝突防止オートブレーキのオプション設定。ご承知のように、軽自動車としては宿敵ムーヴに続く実用化である。前方検知デバイスがレーザーレーダーで、車速30km/h以下の低速限定システムであることはムーヴと同じ。また、駐車場などでの誤発進防止機能が備わるのもムーヴと同等である。ただ、レーザーレーダーをボディ先端のフロントグリルに内蔵するムーヴに対して、ワゴンRのそれはフロントウィンドウ上部に設置されることが技術的な違い。絶対的な検知距離はダイハツ式のほうが長い(=遠い)のだが、フロントウインドウのワイパー払拭範囲にレーダーを備えるスズキ式は「悪天候時の検知精度」に優れるのだという。ワゴンRの同オプション価格は4.2万円(ESPや急ブレーキ自動ハザード込み)。ムーヴ(5万円)よりきっちり安く出すのがなんとも挑発的行為である。
スズキがここまで急いだ理由は明らかだ。先代までのワゴンRなら、フルチェンジ後しばらく他車を圧倒する販売台数になるのが通例だったが、ホンダN BOXにアタマを押さえられた現行型では、今のところ月間トップは2回だけ。しかも、マイチェン後のムーヴが赤丸急上昇で、今年4月以降はムーヴが4カ月連続で軽トップ。そんなムーヴ人気を支えるのがオートブレーキであることも明白で、その装着率はじつに6割にのぼるという。こんな屈辱的状況をスズキが許すわけがない。負けた理由も倒すべき敵もハッキリしているだけに、やるべきことに迷いはない。
このように技術および経済的なトピックは多いワゴンRだが、さすがに乗った印象が従来と大きく変わるわけではない。より攻めたCVT制御ということでドライバビリティの悪化が心配されたが、少なくとも今回のチョイ乗り程度では違いはほとんど感じられない。ただ、せっかくパワートレインを見直したのに、ガバッと開けすぎ感ありのスロットル特性がそのままなのは残念。モード燃費には関係ない部分だが、ここはもっと抑制をきかせたほうが実用燃費にもドライバビリティにもメリットがあると思う。
「今度はダイハツの番、何をやってくるんでしょうかね?」と開発担当氏を誘ってみたら「どうでしょう、そのときはそのときです」と不敵に笑う。いかにスズキといえども、まったくの白紙から半年でオートブレーキを商品化したとは考えにくい。スズキもダイハツも、つねに互いの手を先読みしながら、あらゆる攻撃&迎撃パターンを用意しているんだろう。どこまでいくのか。他人事ながらちょっと恐い。
(文・佐野弘宗 写真・田中秀宣)
スズキ・ワゴンR 20周年記念車(2WD)
価格 | 134.4万円 |
0-100km/h | na |
最高速度 | na |
燃費 | 30.0km/ℓ |
CO₂排出量 | 77g/km |
車両重量 | 790kg |
エンジン形式 | 直3DOHC, 658cc |
エンジン配置 | フロント縦置き |
駆動方式 | 前輪駆動 |
最高出力 | 52ps/6000rpm |
最大最大トルク | 6.4kg-m/4000rpm |
馬力荷重比 | 65.8ps/t |
比出力 | 79.0ps/ℓ |
圧縮比 | 11.0:1 |
変速機 | CVT |
全長 | 3395mm |
全幅 | 1475mm |
全高 | 1660mm |
ホイールベース | 2425mm |
燃料タンク容量 | 27ℓ |
荷室容量 | na |
サスペンション | (前)マクファーソン・ストラット |
(後)アイドレーテッド・トレーリング・リンク | |
ブレーキ | (前)ディスク |
(後)ドラム | |
タイヤ | 165/55R15 |