スバルWRX STI tSタイプRA
公開 : 2013.08.26 19:11 更新 : 2017.05.29 18:42
森さんに話をうかがっていると、タイプRAは「とにかく11:1というステアリングレシオを商品化したい」というのが、そもそもの着想っぽい。そこには「WRCワークスカーこそ、ストリートスポーツの究極のカタチ」という森さんの信念もあっただろう。また、最近のSTIコンプリートカーでは、とにかく速く鋭いクルマを求める信者から「思ったよりヌルい」という声が届いていたとのウワサもきく。ここ数年のSTIコンプリートカーはまるで哲学者のごとく高次元の理想を追い求めていたがゆえに、乗った第一印象はベース車両よりマイルドに感じられたのも事実。まあ、それこそ理想のストリートカーなんだけど。
タイプRAはそういう声も勘案しての11:1なのだろう。そして、その11:1をアマチュアが公道で乗るモノとしていかに手なずけるか……がキモだった。たとえばフレキシブル〜と同じくSTIシャシー技術の特徴であるドロースティフナー。これはサブフレームとボディ本体をロッドでつないで引っ張りテンションをかけることで、サブフレームの余分な動きを抑え込むものだが、そのドロースティフナーがフロントだけだったS206に対して、今回のタイプRAではリヤにもつく。今回のシャシー開発を率いた渋谷真さんは「いかにタイムラグなく、リヤのコーナリングフォースを立ち上げるかが重要なんです」という。
超クイックステアリングのタイプRAが神経質なクルマになっていないのは、そこに秘密があるらしい。フロントだけが先走らない。操舵した瞬間に、4輪がしっかり踏ん張ったコーナリング姿勢が即座に整う。敏感だけどエッジが立っていない……というか、徹底して丸い動きをする。正確、リニア、ムダな動きがない、一体感……と、優れたスポーツカーの走りを表現する言葉はいくつもあるが、これに乗ると「こういうことか?」とヒザを打ちたくなるのはウソではない。「だからですね、タイヤもRE070という銘柄はベースと同じですが、実際は特性が異なる専用品」と渋谷さん。厳密には2010年発売のS205のために開発したものが「試してみたらドンピシャだった」との理由で再登板の流用だそうだが、「普通のRE070より縦バネを落としている」ということらしい。タイヤ単体ではよりマイルド方面。これもバランスである。乗り心地もベースのスペックCより快適なくらいだ。
森さんがSTIにきたのは昨年のことで、それ以前は富士重工でWRX-STIの開発リーダーをやっていた。そもそも2007年のフルチェンジからその後のスペックC、そして2010年のマイチェンまで、現行WRX-STIの主要な仕事はほぼすべてが森さんが手掛けてきた。森さんは「現行WRXベースのコンプリートカーも、これが最後かもしれません」などとおっしゃるが、そうなると現行WRX-STIは森さんにはじまって森さんで終わる……なんてね。タイプRAにはそんなマニア好みの裏話があったりもする。
(文・佐野弘宗 写真・花村英典)
スバルWRX STI tSタイプRA・NBRチャレンジパッケージ(レカロ仕様)
価格 | 299.0万円 |
0-100km/h | 508.2万円 |
0-100km/h | na |
最高速度 | na |
公称燃費 | na |
CO₂排出量 | na |
車両重量 | 1450kg |
エンジン形式 | F4DOHCターボ, 1994cc |
エンジン配置 | フロント縦置き |
駆動方式 | 4輪駆動 |
最高出力 | 308ps/6400rpm |
最大最大トルク | 43.8kg-m/3200rpm |
馬力荷重比 | 212ps/t |
比出力 | 154ps/ℓ |
圧縮比 | 8.0:1 |
変速機 | 6段M/T |
全長 | 4605mm |
全幅 | 1795mm |
全高 | 1465mm |
ホイールベース | 2625mm |
燃料タンク容量 | 60ℓ |
荷室容量 | na |
サスペンション | (前)マクファーソン・ストラット |
(後)ダブルウイッシュボーン | |
ブレーキ | (前)Vディスク |
(後)Vディスク | |
タイヤ | 245/40R18 |