遂にロータリー復活 マツダMX-30 R-EVへ英国試乗 1ローター830cc 燃費は今ひとつ

公開 : 2023.10.12 19:05

市街地でも郊外でも気持ちよく走れる

ただし、MX-30 R-EVの駆動用バッテリーは、170psをまかなえるだけの出力を備えていない。そこで、必要に応じてロータリーエンジンが回転。発電機から駆動用モーターへ、追加の電気が送られる。

これはハイブリッド・モード時だけに限らない。アクセルペダルを深く倒すと、EVモードを選んでいてもエンジンが加勢する。

マツダMX-30 R-EV マコト(欧州仕様)
マツダMX-30 R-EV マコト(欧州仕様)

システムは少々複雑ながら、ドライバーが気を配る必要はない。基本的に、ドライブモードを選ぶだけで大丈夫。短距離の通勤にはコンパクトなバッテリーEVとして乗れ、週末の長距離ドライブにはハイブリッドのクロスオーバーとして活躍してくれるだろう。

ステアリングホイールにはパドルが備わり、回生ブレーキの強さを調整できる。運動エネルギーの回収が始まると、電気的な唸りがハミングのように聞こえてくる。

全力ダッシュを求めると、ロータリーエンジンの燃焼音が少し遠くから聞こえてくる。ボディの下の方で電動工具を動かしているような、そんな響きに思えた。

複雑なシステムが故に、MX-30 R-EVはMX-30 EVより車重が131kg重い。しかし、市街地でも郊外でも気持ち良く走ってくれる。適度に引き締められたサスペンションを備え、運転が楽しい。

行動範囲をぐんと広げたMX-30

今回の試乗では、すべてのドライブモードを試しながら、様々な条件を走らせた。正確に電費/燃費を把握するのは難しいといえるが、プラグイン・ハイブリッドと同じく、バッテリーEVや高効率な内燃エンジンモデルほど、平均的な数字は良くないようだ。

EVモードで得られた電費は、4.8km/kWhを超えなかった。ある程度の充電量を維持した状態でのハイブリッドモードの燃費は、12.0km/L前後に留まった。カタログ値でのCO2の排出量は、21g/kmになる。

マツダMX-30 R-EV マコト(欧州仕様)
マツダMX-30 R-EV マコト(欧州仕様)

筆者1番のお気に入りはインテリア。内装にはコルクやソフトなレザーが採用され、個性的で好印象な雰囲気を漂わせる。ダッシュボード上にタッチモニターが据えられ、手元には便利なロータリー・コントローラーも用意されている。

駆動用バッテリーの容量が小さいため、英国価格は3万1250ポンド(約565万円)からと、比較的お手頃。MX-30 EVより、若干高めの設定ではあるけれど。

エネルギー効率を最優先にするなら、オススメできるモデルではないかもしれない。
しかし、利便性や個性を重視するなら、ぜひ検討候補へ加えてみて欲しい。

マツダは、バッテリーEVのMX-30 EVがニッチなモデルだと認めている。観音開きのリアドアは小さく、リアシートは広くなく、駆動用バッテリーの容量が小さいためだ。しかし、ライフスタイルへ合致する人にとっては、素晴らしいチョイスになり得る。

ハイブリッドのMX-30 R-EVは、その間口を拡大する存在といっていい。魅力はそのままに、行動範囲をぐんと広げることができる。

マツダMX-30 R-EV マコト(欧州仕様)のスペック

英国価格:3万1945ポンド(約578万円)
全長:4395mm
全幅:1795mm
全高:1555mm
最高速度:140km/h
0-100km/h加速:9.1秒
燃費:100.2km/L
CO2排出量:21g/km
車両重量:1780kg
パワートレイン:永久磁石モーター+シングルローター830cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:170ps
最大トルク:26.5kg-m
ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事