日本初の純国産車から25年 トヨタ・クラウン(4代目) クジラ・クーペの不思議な魅力(2)
公開 : 2023.10.22 17:46
低速域で重いステアリング ストレートは安定
リアヒンジ式のボンネットを持ち上げると、クロスフローの直列6気筒エンジンが姿を表す。2バレルの愛三社製ダウンドラフトキャブレターが載り、ブルーに塗装されたエグゾーストマニフォールドが目を引く。メルセデス・ベンツのユニットにも似ている。
インテリアは、ブラックの合皮で覆われている。友人の父が乗っていた、クラウン・ステーションワゴンを思い出させる。
ドアは長く、リアシートへの乗り降りは想像ほど大変ではない。Cピラーが太く、斜め後方の視界を遮っている。ダッシュボードとステアリングホイールのデザインは、美しいとはいえないだろう。タコメーター以外の計器類が、正面にずらりと並ぶ。
集中ドアロックが備わり、トランクリッドは車内から解錠でき、サイドウインドウはすべて電動。リアシート側からもラジオを操作できる。キーをイグニッションの位置で挿しっぱなしにしていると、ブザーが警告を続ける。
運転席からの視界は、水平に伸びるボンネットの主張が強い。2.6L直列6気筒エンジンが遠くからノイズを放つ。3速ATのシフトチェンジは滑らか。キックダウンの反応も悪くないが、目立って加速力が増すわけではない。ロードノイズは小さめだ。
ブレーキングでノーズを沈めるが、安定してストレートを駆け抜けられる。大きなステアリングホイールは、低速域では明確に重い。レシオはスローで、小回りが利くとはいえない。思い切り腕を動かす必要があり、繊細な操舵は難しい。
不思議な魅力の超希少なクジラのクーペ
クラウン・ハードトップクーペの走行フィールは、至って穏やか。アグレッシブという言葉とは無縁で、これは当時の英国人がトヨタを支持した理由でもあった。
高級車という市場では、価格価値以上にブランドのステータスが重要視される。その点で、4代目クラウンの訴求力は及ばなかった。とはいえ、初の純国産車から25年後に誕生したモデルでありながら、印象的な水準に届いていたことは明らかだろう。
それから50年が経過し、超希少なクジラのクーペは、唯一といえる不思議な魅力を放っている。確かに、要点を逃していた側面もあるが、トヨタによる賢明な努力が表れている。高級サルーン最高の1台、レクサスの原点が生まれていたことは間違いない。