三菱eKワゴン

公開 : 2013.06.26 19:47  更新 : 2021.10.11 09:07

eKとは“excellent K-Car”の意。2000年に三菱が発足した「eK(いい軽)プロジェクト」に端を発するこの称号を受け継ぐモデルは、今回誕生した新型「eKワゴン」、「eKカスタム」で、サードジェネレーションに進化したことになる。ちなみにその開発は、日産との合弁によって2011年6月に設立された、NMKV社によって行われており、日産は姉妹車の「デイズ」を市場に投じることになる。

まず試乗したのは、新型eKシリーズのセールスではメインを担うeKワゴン。先代モデルでは、左側のリヤドアを電動スライド式としたことでも大きな話題を呼んだが、新型では左右ともにリヤドアは通常の横開き方式となったのが大きな特徴だ。

新型eKワゴンのエクステリアデザインは実に魅力的なフィニッシュだ。特に印象的なのは、ボディサイドを前後に流れるシャープなラインのコンビネーションで、三菱はそれを“トリプルアローズライン”と呼ぶが、それはともすれば実用本位で地味な印象に終始しがちな軽自動車のデザインに、新たな価値観を生み出すものともいえる。フロントマスクも実にスタイリッシュな仕上がりだ。eKカスタムとは、ここで明確な差別化が図られている。

そのボディシルエットからも、キャビンの使い勝手には大きな期待が持てるeKワゴンだが、ドライバーズシートに着席してみると、まずはその上質感に魅了される。ボディサイズの制約からか、助手席にパッセンジャーを迎えると、左右方向にはややタイトな印象を受けてしまうものの、全体的に広がり感、そして柔らかさを演出することに留意したというインテリアのデザインは、コンパクトサイズのヨーロッパ車と比較しても、まったく引けを取らない解放感と上質感を生み出しているのだ。

eKワゴンのインテリアは、ブラック&アイボリーを基調色に、センターパネルをピアノブラック調としたもの。試乗車はトップグレードの「G」で、これにはタッチパネルを採用したオートエアコンが装備され、そのグラフィックがセンターコンソールでのアイキャッチとなっている。さまざまな収納スペースをはじめ、前席まわりでの実用性は、さすがに長年にわたって、独自の企画である軽自動車を造り続けてきた日本の作といった印象。さらに後席に身を委ねてみると、ここも十分すぎるほどに快適な移動空間であることが確認できる。後席は170㎜の前後スライド量を持つほか、50:50の分割可倒を採用。したがってラゲッジスペースも、必要時にはさらに大きく容量を拡大することが可能となっている。

搭載されるエンジンは、最高出力が49psとなる、659ccの直列3気筒DOHC12バルブ。これにCVTを組み合わせるというのがパワーユニットの構成だ。駆動方式は、Gグレードでは2WDと4WDがラインナップされるが、試乗車は2WD。停止時には約13km/h以下で作動するアイドリングストップ機構を採用したことなどで、JC08モードで29.2km/ℓという燃費性能を実現しているものの、パフォーマンスは個人的にはやや物足りない。エンジンとCVTの各々が発するノイズも、加速時にはやや耳障りなものに感じてしまう。高剛性ボディ、そして絶妙なセッティングのサスペンションで、乗り心地にも、これまでの軽自動車のイメージを覆す、素晴らしい高級感が生み出されているだけに、それは特に残念に感じられた部分だった。

記事に関わった人々

  • 山崎元裕

    Motohiro Yamazaki

    1963年生まれ。青山学院大学卒。自動車雑誌編集部を経て、モータージャーナリストとして独立。「スーパーカー大王」の異名を持つ。フツーのモータージャーナリストとして試乗記事を多く自動車雑誌、自動車ウェブ媒体に寄稿する。特にスーパーカーに関する記事は得意。

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