世界が喜んだレシピ マツダMX-5(ロードスター/NA系) 英国版中古車ガイド 最も成功したスポーツカー(1)
公開 : 2023.10.29 17:45
モダンクラシックとして英国で高評価を集める初代ロードスター 小さく軽いボディにツインカム4気筒 英編集部が中古車で魅力を再確認
初代ロータス・エランをモダナイズ
1990年、AUTOCARは初代マツダMX-5(ユーノス・ロードスター)へ試乗し、「最高!」と見出しを打った。動力性能では、同時期のホットハッチ、フォード・フィエスタ XR2iの方が勝っていたが、MX-5は完璧なドライバーズカーといえる内容にあった。
素晴らしいシャシーバランスに鋭敏なアクセルレスポンス、爽快な排気音、滑らかなシフトフィール。ブリティッシュ・スポーツカーのレシピの復活ともいえ、小さく純粋なスポーツカーへ飢えていた世界を喜ばせた。
初代ロータス・エランをモダナイズしたようなMX-5は、耐久性の高いツインカム直列4気筒エンジンをフロントへ搭載。実用性も悪くないオープンボディに後輪駆動という、理想的なパッケージングが与えられていた。
ボンネットは軽いアルミ製で、大きな前後のバンパーも同様なプラスティック製。タイヤは、専用開発されたダンロップSP スポーツを履いていた。好バランスに仕上げるための努力が、細部まで注ぎ込まれていた。
驚くほど速かったわけではないものの、そのぶん安全性は高かった。入門モデルにもピッタリだった。
英国のディーラーは、自国のドライバーの嗜好を踏まえ、当初からBBR社製のターボキットを提供。最高出力を150ps以上に高め、210km/hの最高速度を得ることができた。7.2秒で0-97km/h加速をこなした。
さらに、TWR(トム・ウォーキンショー・レーシング)へ依頼し、熱線入りリアガラスと内装を備えた、独自のハードトップも先行して販売されている。
世界で最も成功したスポーツカー
1993年のマイナーチェンジで、1.8Lエンジン版が登場。ボディ剛性が増し、ギア比が高まり、燃料タンクは拡大し、運転席にエアバッグが追加された。ところが、結果的には初期の1.6L版の方が速く、以降の英国仕様では1.6L版がデチューンされている。
剛性が改善したことで、マイナーチェンジ後はサスペンションがしなやかに動くようになっている。引き締まった身のこなしは従来どおりで、スポーツカーとしての魅力は薄れていない。
マツダは市場毎に独自仕様を提供したが、最近の英国で流通している例の多くは、日本からの並行輸入車のようだ。それには、マツダMX-5ではなくユーノス・ロードスターのエンブレムが貼られている。
英国仕様の車台番号はJMZで始まるが、日本仕様はNAで始まる。また、装備は日本仕様の方が充実していることが多いものの、防錆性は若干低い。
マツダの技術者の狙い通り、運転はすこぶる楽しい。小さなボディサイズのおかげで、狭いワインディングでも過度に構える必要はない。カーブが連続する区間では、出色のハンドリングでドライバーを満たしてくれる。
初代MX-5は世界中で人気を博し、他のメーカーへオープンスポーツを提供しようと考えさせた。ちなみに、初代の生産数の50%以上が北米へ輸出されている。世界で最も成功したスポーツカー、という称号を得るに至った傑作だ。