反応や感触も自由自在? これからの「ステアリング」技術 運転の苦手な人、クルマ好きにも利点

公開 : 2023.10.17 18:05

・ステア・バイ・ワイヤ技術が魅了的なハンドリングを実現する?
・開発時の「課題」と、英タイタン社の解決方法とは。
・運転のしやすさ、走行性能、フィーリング、製造面でメリット。

これからのステアリング技術

ステア・バイ・ワイヤという技術が最近注目を集めている。これまで大々的に使われることのなかった技術だが、クルマの走りや性能に大きな影響を与えるだけでなく、ドライバーが得るフィーリングも柔軟に調整できるようになってきた。

ステア・バイ・ワイヤでは、従来の電動パワーステアリング・システム(EPAS、電動パワステ)のように電気モーター駆動のステアリングラックを使用するが、ステアリングコラムや人間のドライバーとは機械的に接続されていない。

英タイタン社の開発したステアリングラック
英タイタン社の開発したステアリングラック    タイタン

最新の技術では、市街地での低速走行から郊外での爽快なドライブ、高速道路のクルージングまで、クルマのキャラクターと走行状況に応じた「特性」を正確に表現できるようになった。

今年トヨタbZ4Xに搭載され、2024年にはレクサスRZ 450eにも導入される予定だ。日産の海外向け高級車ブランド、インフィニティは約10年前にQ50に導入したが、万が一に備えてステアリングコラムが残されている。

「真」のステア・バイ・ワイヤは、先述の通りステアリングホイールとステアリングラックの間に機械的な接続がなく、電子的な接続のみが存在する。トヨタとレクサスのワンモーショングリップはこれにあたる。

一見いかがわしいコンセプトに見えるかもしれないが、メーカーにとってもドライバーにとってもメリットは多い。前者にとってのメリットの1つは、作動油を使用しない “ドライ” シャシーを製造できる可能性があるということだ。車両の各サスペンションコーナーがあらかじめ組み立てられ、生産ライン上で固定され、文字通りプラグインされることで、面倒な作動油やそれに伴うすべてが不要になるというもの。

英国のタイタン社は、1960年代にレーシングカーの開発からスタートし、現在は高度なステアリング・システムを開発している。同社は最近、少量生産メーカー向けに精密なステア・バイ・ワイヤ・システムを開発した。将来的には少量生産車だけでなく、例えばスポーツカー自動運転の配送車向けにカスタマイズされたシステムも実用化の可能性がある。ステア・バイ・ワイヤはそうした実用的な用途にも適している。

自動運転車には当然ながら自動ステアリング機能が必要だが、人間のドライバーにもメリットがある。例えば、可変ステアリングレシオ(ステアリングギア比)と可変ウェイトだ。機械的な接続がないため、直進巡航時にレシオを下げることができ、これにより不要な入力に対するステアリングの感度を下げ、敏感に反応しにくくなる。簡単に言うと、高速道路ではゆったりとリラックスしたクルージング、市街地ではテキパキとした走りをするといった二面性を実現できるということだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェシ・クロス

    Jesse Crosse

    英国編集部テクニカル・ディレクター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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