歴代最速の確かな魅力 フェラーリ500 スーパーファスト 超富裕層のためのグランドツアラー(1)
公開 : 2023.11.04 17:45
最高出力は365ps以上 最高速度は273km/h以上
美しいハンドビルド・ボディは、保守的なシャシーに支えられた。フェラーリ275 GTBのようなトランスアクスル・レイアウトや独立懸架式サスペンションは採用されず、リアにはリジッドアクスルが組まれた。
シャシーは、楕円パイプが電気溶接されたチューブラーフレーム。基本的に1963年の330 GTと同一といえた。
トランスミッションは、オーバードライブ付きの4速マニュアル。ブレーキはツイン回路とサーボを備えたダンロップ社製ディスクで、15インチ7Jのボラーニ社製ワイヤーホイールが履かされた。トレッドは、330 GTより広い。
500 スーパーファストのエンジンは、ランプレディ・ユニットとコロンボ・ユニットの融合版といえるもの。シリンダーヘッドは別体となり、ボア間隔は108mm。吸気ポートは12本並んだ。モデル名の500は、シリンダーの容量を切り上げたものだ。
バンク角は60度。排気量は4962ccで、ティーポ208と名付けられ、最高出力は365psから405psが主張された。最高速度は適切なギア比で273km/h以上に届くとされ、同社の歴代最速グランドツアラーに相応しい数字だったが、公式には確認されていない。
少なくとも、ステータスを重んじる富裕層へ訴えるには、充分な性能だった。パンフレットでは、指導者や実業家、芸能人などへ向けたモデルだとうたわれた。
イランの皇帝やイスラム教の指導者なども購入しているが、29台の左ハンドル車の内、12台が北米へ渡っている。英国でも欲する人は比較的多かった。1万1518ポンドのフェラーリには、確かな魅力が備わっていた。
最後にラインオフした右ハンドルのシリーズII
ちなみに、フェラーリ275 LMも同じ価格だった。この予算があれば、275 GTBを2台購入できたほか、ロールス・ロイス・ファントムV ツーリング・リムジンをガレージに収めても、お釣りが残ったほど。ジャガーは、2000ポンドしなかった。
合計で37台の500 スーパーファストが完成しているが、英国向けの右ハンドル車は8台。左ハンドル車も2台輸入された。ドイツには、ジュネーブ・モーターショーのプロトタイプを含む2台が、ギリシャとベルギー、フランスには1台づつ納入されている。
1965年に25台目のシリーズIが完成した時点で、シリーズIIへアップデート。最新仕様の330 GTと、技術互換性を高める目的があった。
スタイリングでは、フロントフェンダーのエアアウトレットの処理がシリーズIと異なる。また、5速マニュアルが組まれ、ブレーキとクラッチペダルがフロアヒンジ式から吊り下げ式へ変更されている。
今回ご紹介する500 スーパーファストも、シャシー番号8897SFのシリーズII。エアコンとパワーステアリングのオプションを備え、マラネロの工場を最後にラインオフした車両となる。
1966年8月に英国のフェラーリ代理店へ届けられ、その後サミュエルズ氏という人物が1万1637ポンドで購入している。ジャガーEタイプを下取りに出して。
彼はベージュのレザー内装と、ヒーター付きのリアガラスを追加で希望した。リアのパーセルシェルフは内装と同じレザーで仕上げられ、燃料のカットオフスイッチとドアミラーが与えられ、運転席の座面が若干持ち上げられた。
この続きは、フェラーリ500 スーパーファスト 超富裕層のためのグランドツアラー(2)にて。
画像 超富裕層のためのグランドツアラー フェラーリ500 スーパーファスト 同時期の250とディーノ 現行の812も 全108枚