ライドシェアリングとは何か? カーシェアとの違い 米国の事情 日本の課題

公開 : 2023.10.18 11:15  更新 : 2023.10.19 22:27

ライドシェア アメリカではどう拡大?

こうした中で、2010年代始めから半ばにかけて、アメリカで個人が所有する車をタクシーのようにして使うタイプのライドシェアが始まった。

最初は、一種のボランティア活動の部類という形態で、乗車の対価を支払う営業行為ではなく、乗車した人が運転してくれた人に対する寄付としていた。

この時点で、アメリカのタクシー事業者の中では、実質的な違反行為という反対の声が上がった。

当初は、「Lyft(リフト)」や「Uber(ウーバー)」がカリフォルニア州サンフランシスコ周辺で活動を始め、その後に全米各地の都市の警察を直接交渉しながら、活動のエリアを段階的に拡大していった。

その過程で、ボランティア活動から事業化への転換を各都市の行政から許可を得ていくというプロセスであった。

ただし、カーシェアに参加するドライバーの運転の質の問題、賃金を含めた労働環境の問題、そして地域によってはタクシー事業者からの反対が強くライドシェアが禁止になるなど、ボランディア活動から事業化を経たこれまで約10年間で、ライドシェアを取り巻く環境はいろいろ変わってきたと言える。

また、中国、インド、東南アジア、そして欧州等でもライドシェアが急速に広まったが、それぞれの国や地域でライドシェアに関する規制などは違いがある。

こうした海外でのライドシェア普及の動きを受けて、日本でも2010年代後半頃からライドシェア導入に向けた模索が始まっていた。

日本版ライドシェアとは何か?

日本では短期間の実証実験を行ったり、または国土交通省が旅客に関する法律に対しての一部解釈を変更する通達を出すなどして、複数のベンチャーが個人所有のクルマを使う日本版ライドシェア事業の準備を進めたが、現状ではほとんど普及してないのが実状だ。

背景にあるのは、現行での自家用有償旅客運送とのすみ分けの難しさだ。

交通手段がほとんどないような交通空白地域や、福祉を目的として、地域住民・交通事業者・自治体などが協議会をつくり、各方面の合意があり、それを国が認める場合、いわゆる白ナンバーで運賃を取り、二種免許がないドライバーが運転することが可能となる。

これが、自家用有償旅客運送だ。

コロナ禍後の観光需要拡大が、日本版ライドシェアを求める大きな声であり、自家用有償旅客運送の目的である地域の過疎化・高齢化とは、目的が全く違う。

また、地方部で日本版ライドシェアを求める声もあるが、自家用有償運送を地域によってどこまでカスタマイズするのかが、今後の論点になるだろう。

いずれにしても、それぞれの地域が真剣に地域の未来について考えることが、日本版ライドシェア導入の議論の前提であるべきだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    上野太朗

    Taro Ueno

    1991年生まれ。親が買ってくれた玩具はミニカー、ゲームはレース系、書籍は自動車関連、週末は父のサーキット走行のタイム計測というエリート・コース(?)を歩む。学生時代はボルボ940→アルファ・スパイダー(916)→トヨタ86→アルファ156→マツダ・ロードスター(NC)→VWゴルフGTIにありったけのお金を溶かす。ある日突然、編集長から「遊びにこない?」の電話。現職に至る。

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