フランス車が「禅」を意識? 新型シトロエンe-C3 廉価、でもおしゃれなクロスオーバーEV

公開 : 2023.10.19 06:05

・新型シトロエンe-C3、航続距離320kmのEV(電気自動車)として登場。
・欧州価格は2万3300ユーロ(約370万円)とクラス最安レベル、さらに廉価なモデルも。
・成熟しつつも遊び心を残したシトロエンらしいデザイン。

コンパクトなクロスオーバーEV

フランスの自動車メーカーであるシトロエンは、小型EVの新型e-C3を欧州で発表した。

新型e-C3はBセグメントのクロスオーバーで、2万3300ユーロ(約370万円)からと同クラスのEVとしては比較的安価な設定となる。欧州市場への参入が相次ぐ中国車ブランドに対抗する狙いだ。

シトロエンe-C3
シトロエンe-C3    AUTOCAR

取材で得た情報によると、右ハンドルの英国での価格は2万2000~2万3000ポンド(約400~420万円)からになるという。現在市販されている最も安価なEVであるBYDドルフィンの2万5490ポンド(約465万円)を大きく下回る価格設定だ。

2025年には、小型のバッテリーを搭載したさらに廉価なバージョンもラインナップに加わる予定で、欧州向け価格は1万9990ユーロ(約315万円)を予定している。

シトロエンの関係者は取材に対し、一部の他社製EVとは異なる5人乗りであることから、同市場で最も手頃で「適切」なEVになると考えていると語った。

このような積極的な価格設定を実現する鍵となったのは、コスト効率の高いスマートカー・プラットフォームの採用だ。このプラットフォームはもともと、インドとラテンアメリカで販売される「CC21型」のC3用に開発されたものである。

欧州向けの新しいC3はEVとして構想されたが、内燃エンジンにも対応可能であり、フロント部分にガソリンエンジン用の十分なスペースを残している。

スマートカー・プラットフォームは欧州安全規制を満たすために改良され、より強固な衝突構造(CC21型C3はラテンNCAPの安全性テストで「星ゼロ」を獲得したことで悪名高い)を導入し、また快適性を向上させるべく多くの微調整が施された。

航続距離320kmでも「十分」

容量44kWhのLFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーが搭載され、1回の充電での航続距離は約320km。2025年登場予定の廉価バージョンは航続距離200kmとされる。

LFPバッテリーは製造コストが安く、寿命が長く、コバルトを含まないという利点がある。しかし、NMC(ニッケル・マンガン・コバルト)バッテリーほどエネルギー密度が高くないため、航続距離を確保するためには重量がかさばりがちだ。さらに、一般的に外気温の影響を受けやすく、寒冷条件下では充電効率が大幅に低下する。

シトロエンe-C3
シトロエンe-C3    AUTOCAR

プロジェクトマネージャーのギヨーム・ノエル氏は、比較的短い航続距離でも十分だと説明する。

「Bセグメントでは、シンプルでありたいのです。当社のお客様のほとんどが、平均して1日あたり80km以下しか走りません。寒冷地であっても、要件を満たせると革新しています」

コストを抑えるため、ヒートポンプは装備されない。

e-C3は、長時間の移動でも使用できるよう、最大100kWの急速充電に対応しており、26分で20~80%の充電が可能だ。

乗り心地は開発時の優先課題の1つとされ、シトロエンのアドバンスト・コンフォート・サスペンションと、新しいアドバンスト・コンフォート・シートが採用された。この組み合わせは初だという。

最高出力112psの電気モーターをフロントに搭載する前輪駆動方式で、0-100km/h加速を約11.0秒で駆け抜ける。最高速度は135km/h。

e-C3のボディサイズは全長4.01m、全幅1.76m、全高1.57mと、現在のC3と大きな差はないが、全高が100mm高くなったことでヘッドルームが拡大されている。後席のニールームもクラストップの広さを誇るという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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